原油下落でロシアの通貨危機再来の可能性

去年後半の下落から一時期リバウンドしていた原油価格が、7月になってまた下がってきている。原油が安くなると、原油が最大の輸出品であるロシアの経済が危うくなってくる。

ロシア経済の過去記事はこちら。

原油安以外にも悪材料が多い

ロシアは通貨・ルーブルが去年12月に暴落し、一時通貨危機状態に陥った。そのような状態になった最大の原因は、ロシア最大の輸出品である原油価格の下落にある。原油価格は去年6月に1バレル＝107ドルにあったものの、7月以降急激に下落して今年1月には44ドルと半分以下になってしまった。

原油が下がるにつれ、ロシア・ルーブルの下落もさらに加速する。去年頭には1ドル＝30ルーブルだった為替レートは、11月のOPEC総会後急落して12月には1ドル＝80ルーブルになる。12月16日にはルーブル暴落を止めるために、ロシアの中央銀行が1度に政策金利を6.5％も引き上げた。

この時ルーブル暴落によってロシアの市民生活にも混乱が広がったが、その後のロシアの通貨安定措置が効果を発揮して一旦暴落は止まった。

今年になって原油価格は3月に42ドルの底をつけてから反騰し、5～6月は60ドル付近で推移。それに合わせるようにルーブルのレートも今年は1ドル＝50ルーブル台で安定してきた。

しかし7月になってイランの原油禁輸が間もなく解除されるという見通しが広がったこともあり、原油価格はまた下げ始め、27日にはすでに47ドル台になっている。原油下落を受けてルーブルも下げており、27日のレートは1ドル＝59ドル台にある。

ロシア経済を追いこんでいるのは、原油安だけではない。ウクライナを巡る欧米との争いは去年以来ずっと続いており、最近ではあまり戦闘の報道はされないが経済制裁はまだロシアと欧米がお互いに課している。

そして原油と並んでロシアの主要輸出品である天然ガスの価格も、現在100万BTU＝2.7ドル付近とここ10年の中でもかなり低い水準にある。

ロシア経済の苦しさは株式市場にも出ており、主要指数のMICEX指数は2011年とほぼ同じ水準の1,700付近にある。日本やアメリカを初め多くの国が、2011年から現在までの4年間で株価が上昇してきたこととは対照的だ。

すでにロシアの実体経済にもリセッションの波は押し寄せていて、今年第1四半期のGDP成長率は－1.9％とマイナスに落ち込んだ。マイナス成長はリーマンショック直後の2009年以来6年ぶりという。景気の低迷のため、ロシア政府は最近になって政府の公務員を11万人もリストラすると発表した。リストラが行われれば解雇された職員は収入が減り、消費が低迷してさらに景気が冷え込むことは確実だ。

また世界経済のけん引役の1つであり、ロシアとの関係も良好な中国経済も減速している。どこを見ても良い材料はなく、ロシア経済の低迷はあと数年は続く可能性が高いと思わせる材料が多い。場合によっては、去年12月のような通貨危機がまた起こるかもしれない。