欧州の対ロシア制裁発動でルーブルが最安値更新

今月上旬に対ロシアの追加制裁を発表していた欧州だが、先週12日にその制裁を発動すると発表した。それに対してロシアも対抗措置を取ると述べており、欧州とロシアの対立深化によってルーブルが史上最安値まで下落している。

ウクライナ問題の過去記事はこちら。

米ドル/ルーブルが最安値へ

すでに述べたように、今月上旬に制裁が発表されて、その発動が少し遅れて12日に発表された。そうなった理由は、今月初めに署名されたウクライナにおける停戦合意が遵守されているかどうか、確認してから制裁を発動すると決めていたためだ。

しかし数日待って結局制裁の発動に至ったということは、ウクライナにおける停戦が欧州の望む形では守られていないことを意味する。停戦に署名したとはいえ、ウクライナ情勢はまだ楽観視はできなさそうだ。

今回発動された制裁は、ロシアの特定のエネルギー企業が、EU域内で資金調達をすることを禁止する。さらにロシアに武器を輸出することを禁止。そして軍事物資に転用可能な品目も輸出を禁止。またウクライナ問題に関係していると思われるロシア人の、EUへの渡航禁止や個人資産の凍結も実施される。

これに対してロシアは相変わらず折れる気配を見せず、欧州からの中古車の輸入を制限するなどの、対抗措置を示唆している。

欧米との対立が一向に改善されないので、ロシアの通貨・ルーブルは外国為替市場で下落を続けている。米ドル/ルーブルレートは今年はずっとルーブルが下落し、8月下旬から9月初頭にかけて一時1ドル＝37.5付近までルーブル安になった。その後停戦文書に署名がされたため少しだけルーブル高になって36.5付近まで反騰。しかしルーブルが上昇したのはほんの1日程度で、その後はまたルーブルが下落し続けている。欧州からの制裁が発表されて週が明けた15日には、ついに1ドル＝38ルーブルを超えて史上最安値を更新した。

ロシアはルーブルの下落を食い止めるために、政策金利を引き上げることで対抗している。ロシアの政策金利は今年初めには5.5％だったが、ウクライナ問題が浮上した3月頃からロシアが利上げを開始。3回の利上げを経て7月には8％にまでなった。

先週12日に金融政策を決定する会合が再び行われたが、この時は8％の据え置きが発表された。しかし事前予想では利上げを予想する声も多く、ロシアの金利の先高感はまだ残っている。

ロシアでは欧米から農産物等を禁輸しているために、物資不足でインフレ率が高まっている。インフレ抑制も含めて、今後はしばらく利上げを続ける可能性が高いと思われる。

ロシアはソ連崩壊直後の90年代前半に激しいインフレを経験したが、欧米との対立の激化は何か冷戦時代、あるいはその直後を思い起こさせるような状況だ。