世界的なエネルギー危機が深刻化へ

エネルギー不足と価格の高騰で特に今冬は世界的なエネルギー危機が起こることが懸念されている。そして10月になって中国北部で大雨が続き、洪水被害のため多くの炭鉱が操業停止に追い込まれている。これが石炭価格の新たな上昇要因となり、世界的なエネルギー危機深刻化要因にもなる。

中国の石炭価格は暴騰

　夏以降原油、天然ガス、石炭などエネルギー価格が高騰しており、エネルギー不足から電力不足となる国も増えている。エネルギー価格高騰の要因はいろいろあるが世界経済の回復が進み需要が急回復していることや、8月末から9月初頭にかけてアメリカに襲来したハリケーン「アイダ」の影響もある。

　特に中国は石炭火力発電の割合が高く、さらに昨年秋にオーストラリアとの対立から豪州産石炭の輸入を停止してしまった。それが電力供給を大きく低下させ、中国各地で電力不足が起こっている。

　そして最近になって電力不足をさらに悪化させるような事態が起こった。中国北部では先月末から今月にかけて大雨が続き、各地で洪水が発生。そして北部の山西省は中国の中でも最大規模の石炭を産出する省だが、大雨・洪水の被害によって省内全体の約9％にあたる60ヶ所の炭鉱が操業停止となった。

　また同様に石炭の産出量が多い隣の陝西省でも、大雨・洪水のために一部の炭鉱が操業停止となっている。

　この操業停止によって石炭価格がまた上昇している。石炭価格の国際的指標として使われることが多いのはオーストラリアのスポット価格で、そちらは10月になって1トン＝200ドルを超えた。

　しかし中国の炭鉱における操業停止は、まず中国国内の先物市場で石炭の価格を高騰させた。中国の3大先物市場の1つである鄭州商品取引所では、大雨・洪水の影響で10月になって石炭銘柄が高騰。10月12日にはすでに1トン＝1,570元（約27,500円）にまで到達した限月もある。

　オーストラリアのスポット価格と同じ1トン単位の取引なので単純な比較ができるが、1,570元は約240ドルに相当する。オーストラリアの方はまだそこまで上がっておらず、中国市場での高騰が際立っている。

　そして中国の水害以外にも、エネルギー危機を深刻化させる材料が出ている。11日にはカタールのエネルギー相が、同国によるLNG（液化天然ガス）の供給が「限界に達している」と発言した。供給がこれ以上伸ばせないなら天然ガス需給は一段とひっ迫し価格上昇要因となる。

　多くの要因が出て進んでいるエネルギー危機なので、少なくとも数ヶ月以内の短期間で解消されることは難しいだろう。