2018年の天井を越えた原油価格の今後

今週になって原油価格がまた大きく上昇し、2018年の天井だった77ドル弱を越えて80ドル近くまで到達した。原油は2010～14年前半に80～110ドルの高水準に留まっていたことがあるが、また100ドル近辺の高値に戻るのだろうか？

追加増産見送りで上昇

　原油価格が今週になってまた大きく上昇している。上昇の背景にあるのは、世界経済が回復傾向にあり原油需要が今後回復するとの観測が広まっていること。それに天然ガス、石炭なども含めエネルギー価格が上昇しエネルギー危機の可能性が高まり、その前に原油先物を買おうという動きが広がったことなどがある。

　また4日月曜には産油国が会合を開き、増産計画をこれまで通り毎月日量40万バレルずつ行っていくことで合意。追加増産がなかったことが原油買いにつながった。

　2018年には世界経済が比較的好景気だったことで、原油価格は77ドルをわずかに下回る水準まで上昇。しかし2019年になると世界経済が減速して原油価格も下落に転じ、2020年にパンデミックが始まると4月にはマイナス40ドルをつける珍現象も起こった。

　だが5月以降原油は上昇が続き、2021年7月には77ドルをつけて2018年の高値をわずかに更新。その後しばらくは調整が続いていたものの、9月からまた上がり始め10月になって2018年の高値を明確に越えて80ドルに接近した。

　今後原油価格がさらに上昇し、2010～14年前半のように80～110ドルになってもおかしくはない。少なくとも80ドルを超える水準に留まる可能性は十分ある。

　パンデミックがやや落ち着き世界経済が回復して原油需要も回復してきている。しかし原油の生産はパンデミック前と同程度には回復していない。原油の生産量を表わす指標の1つに、米国内の石油掘削リグ稼働数がある。

　この指標は毎週金曜に発表されるもので、文字通り石油を掘削するためのリグの稼働数を示す。稼働数はパンデミック前の2020年初頭には600～700基で推移していた。それがパンデミックに伴う石油需要減観測で激減し、20年夏には200基未満になった。しかし2021年になって景気が回復してきても掘削リグの稼働数は緩やかにしか増えておらず、10月上旬現在で428基に留まっている。

　生産がなかなか回復していないことに加え、現在は各国が脱炭素を目標にして化石燃料から離れようとしている。この状況では新しい油田を開発しても長期的には需要が減退し利益が先細る可能性が高く、多くの企業が新油田開発に消極的になっている。

　余談ではあるが原油価格は2008年夏に史上最高値の147ドルをつけた。この時の極端な高騰は短期間で終わった。当時は過剰流動性でマネーが市中に溢れており、かつ株式市場が2007年夏から下げに転じて行き場を失ったマネーが短期的に原油市場に集中したことが原因ではないかと見られる。

　今後の原油価格が2008年の147ドルを更新する可能性はかなり低いが、2010～14年前半のように80ドル以上で長期推移する可能性なら十分ある。