ウクライナ東部で再び戦闘が激化

フランの対ユーロ上限撤廃やECBの量的緩和など、他の重要ニュースが多く流れた今月だが、その一方でウクライナでは戦闘が再び激化しつつある。このために、EUがロシアに対して新たな制裁を課す可能性も出てきた。

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EUが追加制裁を検討

簡単にこれまでの経緯を改めて説明しておくと、ロシアの西にあるウクライナは、国内に親欧米派の住民と親ロシア派の住民が共存する国だった。親ロシア派は地理的にもロシアに近い、東部に主に居住している。

以前までは両者がそこそこうまく共存していたのだが、昨年2月の政変によって、これまでより大きく親欧米寄りの政権が誕生した。そのために東部やあるいは南部のクリミア地域に住む親ロシア派の者たちが、ウクライナからの独立を求め、中には武力でウクライナ政府軍と対立するようになった。そしてロシアは親ロシア派に対して支援をしているため、それに対して欧米が批判を強め、経済制裁合戦が始まった。

最初は制裁に積極的なのはアメリカだけで、欧州は消極的だった。しかし7月にマレーシア機がウクライナ上空で撃墜されて多くの欧州人が犠牲になったため、それ以後は欧州も積極的にロシアへの制裁を実行している。

肝心のウクライナ東部における戦闘は、これまで何度か停戦合意に達しつつ、また再開されるなど不安定な状況が続いてきた。それが今月になって、また戦闘が激化しつつある。最近では変電所に攻撃が及んだため周辺地域で停電が起こり、炭鉱内に500人もの作業員が閉じ込められるという事件も起きた。

戦闘激化を受けてウクライナのヤツェニュク首相は26日に、戦闘が続く東部2州に非常事態宣言を発令した。

今週になって格付け会社のS&Pがロシア国債を1段階格下げして、「投資不適格」級にした。S&Pはその理由について「原油安などのため」と述べたが、このような政治的情勢も多少は格下げの理由として含まれていたのかもしれない。

この情勢を受けてEUの首脳が27日に、「必要なら追加制裁を行う」と述べた共同声明を出している。そして29日に行われる緊急外相会議で、追加制裁について具体的に検討するというのだ。

EUはギリシャで緊縮反対派の政権が誕生したばかりで、ユーロの将来もかなり不透明になってきた。それに加えてロシアとの対立がさらに激化すれば、いくら量的緩和をしても景気の回復は相当厳しいのではないだろうか？

実際ロシア・ルーブルも今週になってさらに下落しており、27日には1ドル＝68ルーブル付近まで売られた。EUが追加制裁を課すようなことになれば、ロシアの経済的危機はさらに深まるだろう。