ベネズエラで新紙幣発行のデノミが実施される

インフレと通貨下落に悩まされているベネズエラで、16日にデノミ政策が実施された。それまでは100ボリバル札が最高額紙幣だったものが、新しく2万ボリバルまでの高額紙幣が発行された。しかしこれはベネズエラの経済危機にとって、「焼け石に水」的な措置でしかない。

ベネズエラの過去記事はこちら。

新紙幣は最高2万ボリバル

ベネズエラは産油国だが、2014年後半から続く原油価格の低迷と、マドゥロ政権の失政によって深刻な経済危機が続いている。

ベネズエラの経済危機を明確にしているのが激しいインフレと通貨・ボリバルの下落だ。インフレ率は2016年には年間1000％を超えたと見られている。そして通貨・ボリバルは、為替市場で急落が続いている。

ベネズエラ政府はボリバルと米ドルの間に公定レートを設定しており、公定レート上はそれほどボリバルが下落しているようには見えない。しかしボリバルの本当の価値は闇レートに反映されており、闇レートではすでに1米ドル＝3000ボリバルを超えていると見られる。

激しいインフレのため、市民生活に不便な面が拡大している。高インフレが続くと物価が極端に上がり、物を買うために大量の紙幣を持ち歩かなくてはいけなくなる。仮にベネズエラで今、100ドル（≒1万1400円）程度のものを買うとしたら、30万ボリバル以上が必要になる。ベネズエラの最高額紙幣は先週まで100ボリバル札だったので、それを3000枚以上は持っていかなくてはならない計算になる。

これでは市民が生活するのにも不便ということで、500から2万ボリバルの新紙幣を発行するデノミ政策が、先月17日になって発表された。

だが新紙幣を発行するだけならまだ良かったのだが、旧紙幣をわずか72時間後に廃止すると発表。早期廃止の理由として、「マフィアが100ボリバル札を海外で貯め込んでベネズエラ経済を混乱させているため」という説明があった。

それまで使っていた紙幣を「72時間後に廃止」とされたのでは、市民はたまったものではない。この政策が発表されると怒った市民により、ベネズエラ全土に暴動・略奪が広がった。この時は治安部隊とも各地で衝突が起こり、数百人が逮捕された。

暴動が起こったためにベネズエラ政府は旧紙幣の廃止時期を延期。そしてその後も混乱はあったが、今週16日になってついに新紙幣が流通されることになった。

ただこの程度の政策では、ベネズエラ経済の根本的な治療にはなりえない。高額紙幣が出回れば買い物に大量の紙幣を持っていく必要はなくなるが、インフレ自体の特効薬にはならない。

ベネズエラは現在の高インフレが止められないと、これからも物価が上がり続け、数年後にはまた同様のデノミ政策を実施しないといけなくなるだろう。