プエルトリコがデフォルト確実で今度は米大陸が金融危機に!?

アメリカ合衆国の自治領であるプエルトリコは近年財政難に苦しんでいたが、今月になってついにデフォルトが確実になった。プエルトリコ自体は小さな島だが、ここが発行している債券をアメリカの多くのファンドが購入している点が問題となる。

原油高や外資撤退で苦境に

プエルトリコはカリブ海にあり、わずか人口360万人程度の小さい島でしかない。ただプエルトリコはアメリカ合衆国の一部であるが、50州のように完全にアメリカと一体化しておらず、自治権が認められている。プエルトリコは50州とは別の税制が適用され、また市民は米連邦議会への選挙権も持っていない。

今年になって欧州のギリシャ危機ばかりが大きく報道されあまりプエルトリコについては報道されていなかったが、こちらも財政が危機的な状況にある。その理由としては、かつてプエルトリコは外資系企業に優遇税制を与えることで成長してきたが、近年それをやめたため外資がどんどん撤退していること。それに去年前半までの原油高のため、原油の輸入が多いプエルトリコはかなり負担が増えたことがある。

ここ1～2年はデフォルト懸念が高まっていたプエルトリコは、ついに8月1日に期限を迎える5800万ドル（約72億円）の債務が支払えないと宣言した。1日は週末だったため実際には3日までに支払えば良かったのだが、どちらにしても支払いはできないとすでに発表している。これで、プエルトリコのデフォルトが確実となった。

プエルトリコのデフォルトが問題なのは、プエルトリコ発行の債券をアメリカの多くのファンドがポートフォリオに入れている点だ。それは税制優遇措置のためで、プエルトリコ発行の債券に投資することによって得た利益は、連邦税と地方税の両方がかからないという大きなメリットがある。現在の状況だと、プエルトリコのデフォルトはアメリカのファンドに損失を広げ、また金融不安を広げる原因にもなりかねない。

またギリシャ危機と違うのは、プエルトリコを救済する意思のある機関や国が今のところ存在しないことだ。ギリシャはEUとユーロ圏の一部であり、その破綻はEU全体に悪影響を及ぼす。だからこそ他のEU諸国がなんとしても救済しようとしていた。

それに対してプエルトリコの場合、最も利害関係が大きいのはアメリカ合衆国だが、アメリカはルー財務長官が「プエルトリコの救済はしない」と宣言している。つまりデフォルトの危機になっても救済はなく、デフォルトを宣言するしかない。

プエルトリコは自治領であり連邦破産法が適用できないため、米議会ではそれを適用できるようにするための法案が現在作成中だと言われる。

1日に返済できない5800万ドルはプエルトリコの債務のごく一部で、債務総額はその1000倍以上の730億ドル（約9兆円）もあると言われる。それだけの債務を持つプエルトリコがデフォルト状態になったら、金融市場への影響は計り知れない大きさになるかもしれない。