英とEUが離脱案で合意

英ジョンソン政権がまとめた離脱案について協議してきた英とEUだが、17日になってこの案で合意したと発表された。これで一歩前進となったものの、これから英議会の承認を得るという難関が待ち構えている。

議会の承認はかなり難関か

イギリスの前メイ政権ではついに離脱は実現できずに10月末まで延期されたが、7月末にジョンソン政権が誕生してから新たな離脱交渉が開始。そして今月頭にジョンソン政権がまとめてEUに提出した新たな離脱案について英とEUが協議を続けてきた結果、両者が合意したと17日になって発表された。

これでEU離脱問題は一歩前進したことになる。新しい案は、離脱をしてもイギリス領北アイルランドだけが単一市場に残ると規定していたと言われる。イギリスの他の地域は離脱するが、これによって離脱の一番のネックとなっているアイルランドの国境問題に対処する。しかしこれはあくまで今月頭にまとめた時点の案で、17日になって合意した案は何らかの変更が行われた可能性もある。

前メイ政権の離脱案では、アイルランド国境問題について解決案が見つかるまで、イギリス全体が関税同盟に残るというというものだった。そのため事実上離脱しないことと同じで、それが英議会の反発を招いていた。

案の内容は全て明らかになっていないが、ともかく英政府とEUは合意をすることができた。だがここまではメイ政権も到達できた。問題はこれから英議会で承認されなくてはいけない点にある。

この案に関して17日に早速、与党・保守党に閣外協力をしている民主統一党（DUP）が反対を表明した。DUPは北アイルランドの地域政党なので、問題となっている地域がいきなり反対をしたことになる。

9月3日に行われた、EU離脱の延期要請を首相に義務づける法案の採決では、ジョンソン首相は保守党の議員に対し党議拘束で反対に投票するよう命じた。しかし賛成に投票した議員がおり、その議員たちは除名された。結果として現在保守党は英下院で過半数を失っている。

現実的には今回の案が議会の承認を得ることはかなり難しい。とはいえ承認が得られないなら、ジョンソン首相は法案で義務付けられた通りEUに来年1月までの延期を要請する必要がある。

この義務について以前からジョンソン首相は履行する気がないと発言していたが、最近になって延期の申請に対して前向きだという情報も出ている。実際にやるかやらないかは、その状況になってみないとわからない。また延期を要請したとしても、EU側が承認するとは限らない。議会の承認が得られず、延期もされないならば10月末に「合意なき離脱」になる。

10日木曜頃から17日まで、英とEUの交渉が順調に進んでいるという情報が何度か流れ、その度にポンドは大きく上昇してきた。10日日中には131円付近になったポンド/円だが、17日の合意発表直後には141円と1週間で10円も上がった。これはかなり異例の動きだ。

しかし英とEUの交渉による好材料は全て出終わった。次に出るとしたら英議会が離脱案を承認したという話だが、それはかなり難しいと見られているのが現状だ。