米で承認された仮想通貨バスケットETFが直後に保留

著者鳥羽賢

2025年7月3日

米で今月1日に、仮想通貨5種類を原資産とする投資信託のETFへの転換が承認されたのだが、承認からわずか1日後にSECは承認を保留と通知してきた。この裏では一体何が起こっていたのか。

保留の裏に審査基準の策定検討か

　アメリカでは昨年1月に初の仮想通貨ETFとなるビットコインETFが11本まとめて承認された。その後夏にはイーサリアムのETFも承認され、さらにリップル（XRP）、ソラナ（SOL）、カルダノ（ADA）など主要仮想通貨のETFが次々と申請されている。

　しかしそれらの申請の審査はなかなか進んでいない。その理由の1つとして、審査を行うSEC（証券取引委員会）は今年になって委員長が交代したことがある。昨年までは仮想通貨に厳しいゲンスラー委員長だったが、トランプ大統領が選挙で勝ったことからゲンスラー氏は自ら辞任を申し出た。

　今年1月に辞任した後はしばらくマーク・ウエダ氏が委員長代行を務め、そして4月にようやく現アトキンス委員長が就任した。このような経緯もあり、なかなかETF承認に関する方針が固まらず審査が迅速に行われていなかった。

　一方資産運用会社のGrayscale（グレースケール）がこれまで投資信託として運用してきた「Grayscale Digital Large Cap Fund」（銘柄コード：GDLC）について、ETFに転換する申請が提出されていた。

　この投資信託は仮想通貨に投資をするものだが、対象となる通貨は1つではなくビットコイン（BTC）、イーサリアム（ETH）、リップル、ソラナ、カルダノの5種類のバスケットに連動することを目指すものだった。ただし現在のところビットコインが約80％と圧倒的多数を占めている。

　この申請が7月1日になって承認されたと伝えられた。これで仮想通貨5種を原資産とする新たなETFが誕生する見込みになったのだが、わずか1日後にはその承認は凍結と通知された。

　このような経緯の背景には何があったのか？業界関係者は、SECが仮想通貨ETFの新たな審査の基準・枠組みを完成させるまで、現在審査中の仮想通貨ETFを保留にするのではないかと見ている。

　4月にアトキンス委員長が就任し新体制ができたSECだが、仮想通貨ETFについて明確な上場基準を作成することを検討しているとの情報が最近流れた。基準が明確になれば、仮想通貨ETFの審査も迅速化が期待される。

　したがって今回保留になった5種の仮想通貨ETFや他のETFの審査は、明確な上場基準が完成してから本格的に再開されるのではないかと見られている。今回はたまたま承認されてすぐ保留という事態になったが、上場基準が固まればその後全ての仮想通貨ETFはもっと早く審査が行われることになるだろう。

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