米でテラ創業者が15年の有罪判決を受ける

2022年5月にステーブルコインのテラの米ドルとの価格連動が崩れ、その影響で仮想通貨市場全体が暴落するテラ・ショックが起こった。当時テラ社のCEOだったド・クォン被告は、今週11日に詐欺などの罪状で禁固15年の有罪判決を受けた。同じく2022年に破綻したFTXの創業者と同様、かつて仮想通貨業界で成功した人物が犯罪者に転落した。

求刑は禁固12年

　動きの速い仮想通貨の世界では数年前の出来事はすでに遠い昔に感じられ、記憶している人は少ないかもしれない。しかし2022年5月に発生したテラ・ショックは世界の仮想通貨業界に多大な悪影響を与えたので、まだ覚えている人々も多いと思われる。

　この事件は米ドルとレートを連動させたステーブルコインのテラ（UST）が、突然レート連動が崩れたことをきっかけとして発生した。テラ（UST）はアルゴリズムタイプのステーブルコインだったのだが、そのアルゴリズムが想定通りに動作しなかったことでレート連動が崩れた。

　その影響で同名の仮想通貨テラ（LUNA）が暴落してほぼ無価値になり、さらに仮想通貨市場全体も暴落したのがテラ・ショックだった。

　テラ・ショックは仮想通貨市場全体に多大な悪影響を与えただけではなく、そこに至るまでの過程で運営元のテラフォームズ・ラボ（以下、「テラ社」）が投資家に虚偽の情報を伝えるなど詐欺行為を行っていたことが発覚した。

　そのためテラ社の創業者兼CEOであるド・クォン氏はその後当局に逮捕され、裁判にかけられることになった。民事裁判が先に進み、昨年春頃には罰金と不当利得の返還として44億7000万ドル（約6,930億円）もの巨額の支払いをすることで和解した。

　そしてアメリカの検察はクォン容疑者を詐欺など9件の罪状で起訴し、その中には以下のような罪が含まれていた。

「ステーブルコインのテラはアルゴリズムによって米ドルと1：1のレート連動を実現すると謳っていたが、実際には2021年5月時点でアルゴリズムは崩れており、高頻度取引を行う業者にテラを取引させてレート連動を維持。その事実を隠していた」

　9件の罪状全てで有罪判決を受ければ最大で禁固135年とされる可能性があった。しかしアメリカの裁判には容疑者がある程度協力することで求刑を減らす司法取引があり、2件の罪を認める代わりに求刑を減らす取引が行われたと見られる。

　今年8月の公判でクォン被告は2件の罪状を認め、最終的に検察が行った求刑は禁固12年であった。そして11日には判決が出て、求刑を上回る禁固15年を言い渡された。

　2022年11月には大手仮想通貨取引所のFTXが破綻。そして破綻に至るまでの過程で詐欺行為などがあったとされ、創業者のサム・バンクマン・フリード容疑者は2024年3月に禁固25年の有罪判決を受けた。

　テラ・ショックとFTXの破綻は、2022年に仮想通貨業界を震撼させた2大事件だったが、それらの事件の原因を作った創業者が2名とも有罪判決を受けたことになる。一時は仮想通貨業界で成功して時代の寵児になった2名だが、どちらも犯罪者に転落してしまった。