為替が2月以来の1ドル＝155円をつける

12日になって米政府機関閉鎖の終了や日本の積極財政見通しなどから為替市場では円安・米ドル高が進行。夜には2月以来の円安となる1ドル＝155円をつけた。またユーロやスイスフランに対しては過去最安値を更新した。

1ユーロは179円を超える

　10月上旬に高市総理が自民党総裁に選ばれて以来、為替市場では急激な円安が進行してきた。その背景にあるのは、高市総理が減税や給付金など今後の財政懸念を高める政策を多く掲げてきたこと。また日銀の利上げに反対する姿勢を示していたこともある。

　10月30日に日米が続けて政策金利を発表し、その後の両総裁の会見でFRBは追加利下げ、日銀は追加利上げに慎重な姿勢を示したことで1ドル＝154円を超えた。だがその後しばらくは次の節目である155円に到達しない日々が続いていた。

　しかし12日になって新たな円安・米ドル高材料が出た。まずは米政府機関の閉鎖問題が今週中に終了するとの見通しが高まっていること。そして12日に開催された経済財政諮問会議で、高市総理が改めて積極財政の必要性について述べた。

　これらの材料によって、12日朝方に1ドル＝154円10銭だった米ドル/円は日中から夜を通して円安。米ドル高に動き、夜には2月以来の円安水準となる155円をつけた。

　また最近は円がユーロやスイスフランに対して著しく下落している。ユーロ/円は12日夜に1ユーロ＝179円を超え、スイスフラン/円は1フラン＝193円を超えた。ユーロは2002年に正式発足した通貨でまだ23年の歴史しかないが、円は対ユーロ・スイスフランで過去最も安い水準となった。

　片山財務相は12日の国会で円安について「マイナス面が目立ってきた」とけん制する発言を行ったが、12日の円安を見る限りこの発言はほとんど効力がなかったようだ。

　高市総理が自民党総裁になる前は147円台だったので、総裁就任以降に対米ドルで7円半も円安が進行した。こうなると日銀による介入が意識され始めるが、155円を超えた水準ではまだ介入は行われないであろうとの見方が多い。介入があるとすれば、次の大きな節目である160円を超えたあたりになると予想される。実際に直近のまとまった介入である2024年7月の2回の介入では、最初の介入は1ドル＝161円台で行われた。

　日銀は2022年と24年に計7回もの介入を行ってきたが、現在のレートを見ればわかるように円安を根本的に止めることはできなかった。今後8回目以降の介入をしたとしても同じであり、円安の根本的解決にはならないと予想される。

　結局は円安を止めるためにはまず日銀が利上げをするしかない。もちろん利上げで100％円安が解消できるとの保証はないが、通貨安を止めるためには利上げがセオリーでありまずはセオリー通りの政策を行う必要がある。

　だが利上げを行うと株価が下がったり政府の利払いが増えて財政がさらに圧迫されるなど弊害も多い。日銀が0.5％までしか利上げをできていない理由はそこにあるが、いつかは全てを犠牲にして利上げを行わなくてはいけなくなるのではないか。