決算巨額損失に日本撤退と厳しい滴滴出行

日本のソフトバンクグループが出資する中国の配車とフードデリバリーサービス・滴滴出行が、先週16日に2021年第4四半期と通期の決算を発表。通期では損失額が日本円にして約1兆円にもなった。20日には日本から撤退することも発表され、同社にとっては厳しい状況が続いている。

最近は株価1ドル台も

　中国で2012年に創業され、配車サービスやフードデリバリー事業を行ってきた滴滴出行（銘柄コード：DIDI）は、2021年6月30日にアメリカで上場に成功した。

　同社には日本のソフトバンクグループ（銘柄コード：9984）が1兆円以上出資し、約20％の大株主になっている。上場当時はNY株式市場で大型上場として注目され、公募価格の14ドルに対し初日には18ドルをつけて順調な滑り出しだった。また18ドルをつけた時点での時価総額は約900億ドル（約11兆4000億円）にもなった。

　ところがその後は振るわない状況が続いている。上場から数日後には中国当局が「ユーザーの情報を違法に収集・利用している」との理由で同社のアプリを配信停止とした。この措置を受けて7月6日には滴滴出行株は20％も暴落。

　12月3日には中国当局のIT企業への締め付けのため、上場廃止にする方針であると発表。この発表を受けて12月3日の同社の株はまたも22％も暴落した。今年3月10日には香港市場への上場準備を中断との報道が流れ、この日に上場来最安値の1.71ドルをつけ終値も前日比44％安の1.89ドルだった。

　そして先週の4月16日には2021年第4四半期（10～12月期）の決算と、上場してから初の通期決算となる2021年通期決算を発表した。

　第4四半期は売上高が前年同期比13％減の408億元（約8,160億円）で、純損益が前年同期の約20分の1となる3億8300万元（約76億6000万円）の赤字だった。そしてEPS（1株あたりの損益）は0.32ドルの赤字だった。

　2021年通期での売上は前年比23％増の1,740億ドル（約3兆4800億円）で、純損益は前年の約4.7倍の赤字額となる500億元（約1兆円）の赤字だった。この厳しい決算数字を受け、18日のNY株式市場で滴滴出行株は18％も暴落して2.01ドルで終了した。

　さらに20日になってまた大きなニュースが出た。滴滴出行のグループ企業として日本でフードデリバリーサービスを運営してきたDiDiフードジャパンが、5月25日をもって日本でのサービスを終了して日本から撤退と発表したのだ。

　同社は2020年4月に大阪でフードデリバリーサービスを開始し、その後西日本を中心にサービスエリアを拡大してきた。しかし日本で大きなシェアを持つウーバーイーツや出前館には対抗できずに2年で撤退する結果となった。

　余談ではあるがアメリカではフードデリバリー業界で最大のシェアを持つドアダッシュ（銘柄コード：DASH）も2021年6月から日本でのサービスを開始したものの、苦戦が続いており将来の撤退の噂もある。

　滴滴出行に話を戻すと、同社は厳しい状況が続いており今後NYで上場廃止になる可能性は高い。そうなると出資してきたソフトバンクグループの業績にも少なからず影響を及ぼすだろう。