NY市場の次の大型IPO滴滴出行

中国の配車サービス「滴滴出行」が、今月10日にアメリカで上場を申請した。上場すれば時価総額は600億ドル（約6兆6000億円）以上になると言われ、2021年のNY株式市場で最大のIPOになる可能性がある。

ソフトバンクグループが出資

　中国の配車サービスである「滴滴出行（ディディチューシン）」が、今月10日にアメリカで上場を申請した。滴滴出行はアメリカのウーバーのような配車サービスを中国で提供する企業で、上場すれば時価総額は600億ドル（約6兆6000億円）以上になると見られている。

　滴滴出行について簡単に述べると、同社は中国の北京で2012年6月に創業。主な事業はウーバーと同様に、アプリを使ってタクシーを呼んだりライドシェアをしたりするもの。しかし現在ではその他にも、レンタカーや自転車のシェアなど交通関連の事業をいろいろ行っている。

　中国は10億人以上の巨大な市場がある点が強みで、中国でスタートしたビジネスはアメリカにウーバーなど類似のサービスがあってもそちらが中国で広まる前に、中国発の方が顧客を増やすことができる。

　滴滴出行の上場に話を戻すと、今回の上場はADS（米国預託株式）によって行われる模様。ADSとはADR（米国預託証券）をもとにしたもの。ADRとはアメリカにある制度で、海外で発行されている株式を金融機関が買い付け、それを裏付けとして発行された証券のこと。株とは違うがほぼその会社の株と同じように価格が動く。そしてADSとは、ADRによって表示できる権利を指す。

　現在出ている仮条件はADS1枚あたり13～14ドル。そして上場では2億8800万枚が発行されるので、37～40億ドル（約4,100～4,400億円）が調達される見込みになる。

　滴滴出行にはソフトバンクグループのソフトバンク・ビジョン・ファンド（以下、「SVF」）が108億ドル（約1兆1800億円）も出資し、現在では21.5％の最大株主となっている。仮に上場後の時価総額が600億ドルだとすると、SVFが保有している21.5％の価値は129億ドル（約1兆4200億円）になる。

　108億ドル出資して現在の価値が129億ドルとなれば、約20％の価値上昇ということになる。金額にすると21億ドル（約2,300億円）ですごい額だが、ベンチャー投資の利益率としてはそれほど高くはないかもしれない。

　しかし配車サービスの株価はそれほど上がっていないのは事実。ウーバーは2019年5月の上場時は40ドル程度で、2年経過した2021年6月現在で50ドルとやや上昇した程度。競合のリフトは、2019年3月の上場初日の終値は80ドルを超えていたものの、2021年6月現在で60ドル付近と上場初日より低い。

　2020年春以降は空前の株高になっていた時期なのだが、その時期を含めてもかろうじて上昇かむしろ下落している。これらを見る限り、配車サービスの株価はあまり期待できないのかもしれない。