次の不況はこれまでとは違うものになる!?

リーマン・ショックから回復した景気拡大が名目上は各国でまだ続いており、日本やアメリカなどは戦後史上最長の景気拡大期になっている。しかし長く続いてきただけに、次の不況が来ると反動でこれまでの不況とは違うものになることが考えられる。

不況前に大きく金融緩和

2008年秋のリーマン・ショックで世界経済は一度ドン底まで落ち込み、深刻な不況は2009年まで続いた。しかしこの頃から各国は大規模な金融緩和を始め、その効果もあってか少しずつ不況から回復してきた。そして今は日米が過去最長レベルの長い景気拡大期にある。

アメリカは2009年6月から景気拡大期が続いており、今年の6月で丸10年。120ヶ月を突破した。これまでアメリカ史上最長の景気拡大期は、主にクリントン政権の1991年3月から2001年3月だった。その記録をすでに抜き、このまま行くと「2010年代は不況知らず」のままで終わる。

日本はリーマン・ショック後、2009～12年の短くて弱い景気回復を経て、12年にまた景気後退入り。だが2012年11月からは景気拡大期とされ、今度の拡大はすでに83ヶ月となりこちらも戦後で最長の景気拡大期となった。

ここまで景気拡大が長続きしているのは、1つにはアメリカは年率2～3％程度、日本は1％前後の低成長が続いているためと考えられる。成長が緩やかなので、なかなか景気の天井に到達せずに長期間続いている。

また今年に入ってからのアメリカの政策転換も大きい。去年までは、2019年は米FRBは「3回」利上げをすると予想されていた。しかし去年暮れに世界同時株安になり、景気も減速・後退に向かうと判断。そのため今年春には早くも利上げ予定を取り消し、夏以降は2回続けて利下げを行った。

しかしどれだけ政策を打ち出しても、景気拡大が永遠に続くことは考えにくい。現に日本や欧州はすでに景気後退が見えており、政府が正式に景気後退入りと述べるのも時間の問題となっている。

アメリカはまだ比較的良い経済指標が出ているが、それもいつまで続くかわからない。ただ言えることは、今のアメリカはとにかく金融緩和に依存しているということだ。今年になって景気が減速すると見るや、すぐに2回連続で利下げを行った。

FRBは1回0.25％ずつならあと7回利下げができる余地が残っているが、景気が回復せず、株価もさえないと判断したら今後も躊躇なく利下げを行うだろう。そして利下げをやり切ってゼロ金利になってもまだ足りなかったら、次の量的緩和・QE4（リーマン・ショック後にQE1からQE3まで実施）を打ち出してくることもありえる。

戦後アメリカがゼロ金利にしたのはリーマン・ショック後が初めてのことだが、今後またゼロ金利に戻す可能性が少なからずある。一方欧州も昨年末で止めたはずの量的緩和を、11月から再開すると発表している。そして日本は緩和を縮小することすら全くできずにいる。

もはや日米欧など主要国は「緩和依存症」のようになっている。次の不況はこの状態で迎えることになるが、それでは景気回復のためのさらなる政策があるか疑わしい。リーマン・ショック時はまだ各国が極端な緩和をしていなかったので、その後の緩和が起爆剤となって何とか不況から抜け出せた。

だが次の不況はもともと金融を大きく緩和している状態で突入する。それは今までの不況とは、全く違う不況になる可能性を秘めている。