東証に大旋風を起こしたANYCOLOR

8日にANYCOLORという企業が東証グロースに上場したが、この企業の株価は値がつかずに終わった8日を含め10日まで3日連続で暴騰している。設立わずか5年という短い期間での上場やまだ26歳と若い社長とも併せ、東証にかなりの旋風を巻き起こしている。

創業5年で上場に成功

　8日にANYCOLOR（銘柄コード：5032）という企業が東証グロースに上場した。このIPOは公募価格が1,530円だったのだが、上場初日となった8日は買い気配のまま値つかずで終了。

　9日になるとようやく公募価格の3倍以上となる4,810円で寄り付き、その後5,510円まで上昇してこの日を終了。10日もほぼストップ高の6,510円に張り付いた状態が続き、後場になると引け時まで約定すらないままこの日を終えた。

　10日の終値時点で公募価格の4倍以上になっており、また時価総額も1,900億円を超えた。そしてANYCOLORが話題になっているのは株価だけではなく、2017年5月創業からわずか5年で上場という上場までの短さと、まだわずか26歳の若いCEOのためだ。

　CEOの田角陸（たずみりく）氏は1996年2月生まれなので、2017年5月のANYCOLOR創業時はまだ21歳の大学生だった。それがわずか5年で上場を成功させ、26歳で上場企業のCEOになった。

　ANYCOLORの主な事業は、VTuber「にじさんじ」の運営。VTuberとはアニメなどバーチャルのキャラクターたちが行うYouTuberやその他のネット活動のこと。

　ANYCOLORは創業当初は「いちから」という会社名だった。「にじさんじ」事業はかなり早いうちから始めており、2018年1月には声優を募集し2月には開始。その後どんどん拡大し、海外にも進出して現在に至る。社名は2021年5月に現在のANYCOLORに変更した。

　上場以来3日間でANYCOLORの株価が暴騰しているのは、堅調な業績見通しが背景にある。同社は4月決算だが、2020年4月期の売上高は35億円、21年4月期は76億円、そして22年4月期の見通しは132億6000億円と順調に伸びている。

　純利益も2020年4月期は3,200万円、21年4月期は9億4000万円、そして22年4月期の見通しは25億円だった。

　アメリカではここ数年も優秀な人間が創業した企業が比較的短期間で上場に成功し、創業者は億万長者になるというサクセス・ストーリーが常に生まれている。2012年創業で去年上場した仮想通貨取引所のコインベース（銘柄コード：COIN）や、2013年創業で2020年に上場したフードデリバリーアプリのドアダッシュ（銘柄コード：DASH）がそのような企業だ。

　しかしここ数年の日本は話題になるほど大型IPOとして上場した企業に、個人で創業した企業は少ない。LINE（上場廃止済）は韓国資本の企業だったし、JR九州（銘柄コード：9142）は元官業だ。2013年創業で18年に上場したメルカリ（銘柄コード：4385）は数少ない例と言える。

　それがここにきてANYCOLORという新たなサクセス・ストーリーが生まれた。現在株式市場は世界的な金融引き締めを背景として軟調な展開が続いており、10日終値時点の6,510円という株価が維持できるとは限らない。しかし若くしてこれだけ成功した例は、今後日本で起業する若者の励みになるのではないか。