日本初の円連動ステーブルコインが認可へ

2023年6月施行の改正資金決済法によって日本でもステーブルコインの発行が認められるようになった。そしてそれから2年経った今、日本初となる円にレートを連動させたステーブルコインが、今月中にも金融庁によって認可される見通しのようだ。

海外送金などで活用予定

　法定通貨にレートを連動（固定）させた仮想通貨・ステーブルコインは、すでに海外では多く出回っている。ステーブルコインとして最も広く流通している米ドルに連動したテザー（USDT）は、時価総額ベースで仮想通貨としてビットコイン（BTC）、イーサリアム（ETH）に次いで3位につけている。

　しかし日本は最近までステーブルコインを発行するための法制度が整っておらず、ほとんど発行されてこなかった。政府は2022年6月にステーブルコインの発行について定めた改正資金決済法を成立させ、2023年6月に施行されたことでようやく発行が可能になった。

　その後国内で発行されたステーブルコインの例として、SBI証券系列の仮想通貨企業・SBI VCトレードが今年になってステーブルコインとして世界2位のUSDコイン（USDC）の取り扱いを開始した。

　まだ円建てのステーブルコインが日本で発行された事例はなく、海外でも円建てのステーブルコインはほとんど普及していない。現在出回っているステーブルコインのうち最も多いのは米ドルにレートを連動させたものだ。

　だがここにきてようやく国内発の円建てステーブルコインが登場することになった。JPYC社は日本円建てのステーブルコイン「JPYC」を開発してきたが、JPYCが金融庁によって認可される見込みとなったのだ。

　この件は17日に報道され、その後JPYC社の岡部社長が事実であると認めた模様だ。そして近いうちに正式なプレスリリースなどによって発表されるという。

　JPYCは今年中に正式に発行・流通される見込みになっているとのことだった。これで日本で開発された円連動ステーブルコインが世に登場することになるが、実際に広く流通するかどうかは今後のJPYC社の売り込み活動次第と言える。

　海外でステーブルコインが広く流通している理由の1つとして、仮想通貨取引所が全て仮想通貨で取引が行われ、法定通貨はあまり使われていない点がある。

　例えば海外の取引所でビットコインを買い、その後売って安定した価値のある通貨として保有したいなら、テザーやUSDコインなどステーブルコインと替える必要がある。多くの取引所では取引ペアが「BTC/USDT」「ETH/USDT」などであり、ステーブルコインが基軸通貨として使われている。

　それに対して日本の取引所の取引ペアは「BTC/JPY」「ETH/JPY」のように全て日本円をベースにしており、仮想通貨を売ればほぼ必ず日本円に替えられる。したがって海外取引所のように、法定通貨の価値保存のためにステーブルコインを必要としていない。

　これまで出た情報によると、JPYCは海外送金、法人決済、あるいはDeFi（分散型金融）などでの活用が予想されているという。

　仮想通貨投資家にとって有益になる活用例があるとすれば、海外の仮想通貨取引所、あるいはUniswap（ユニスワップ）などのDEX（分散型取引所）、あるいはMetaMask（メタマスク）などの個人ウォレットでJPYCが採用された場合ではないだろうか。こういったプラットフォームで採用されれば、プラットフォーム上で仮想通貨を保有・取引するにあたり、JPYCに替えることで日本円での価値保存が可能になる。