財政赤字拡大懸念や日銀の利上げ観測を背景として日本の長期金利はここ1~2ヶ月上昇が続いており、週明け22日には1999年2月以来約27年ぶり、21世紀になって初めて2.1%を超えた。
最初に簡単に説明しておくと、長期金利とは10年物国債の利回りのこと。国債には株式市場と同様リアルタイムに売買される国債市場がある。そして国債市場における国債の価格と利回りは反対に動く性質がある。
国債が買われて価格が上がると利回りは下がり、逆に売られて価格が下がると利回りは上がる。2年物、5年物などの国債利回りは短期金利と言われ、10年物国債の利回りが長期金利と言われる。また30年物や40年物など償還期間が超長期にわたる国債もあり、それらの利回りは超長期金利と言われる。
長期金利はその国の国債に対する信用度を測る指標として使われる。信用が低くなると国債が売られ、長期金利は上がる。逆に長期金利が低いならその国の国債は信用されて買われていると見られる。
実際には長期金利はもっと複雑な要因で上下するが、国債への信用度が低下すると国債が売られて長期金利が上昇することは多い。
日本では10月に高市政権が成立したが、高市総理は財政拡大方針のため今後の財政赤字拡大懸念が高まった。また政権成立後に急激な円安になったことで、円安を止めるために日銀は利上げをしないといけないとの観測が高まった。
これらが国債を売る材料となり、ここ1~2ヶ月で長期金利は急上昇。高市総理が自民党総裁に選出された10月上旬から1ヶ月あまりは1.6%台で安定していた長期金利だが、11月後半から上昇。19日の日銀利上げ発表直前には1.9%台だったが日銀が利上げを発表するとその後2%の大台を超え、週明け22日には2.1%を超えた。
長期金利は日本政府の国債利払い費に直接影響するため、2026年度予算の利払い費は金利高によって初めて30兆円を超える見通しになった。また住宅ローンの固定金利は長期金利によって決まるので、今後各社がローンの固定金利を引き上げていくと予想される。
そして問題は今後も長期金利は上がっていくと予想される点だ。高市政権は財政拡大政策を掲げており、日銀は来年以降も利上げを継続する方針である。この状況では今後も金利は上昇する可能性が高く、そうなると政府の利払い費は増えていく。
イギリスでは2022年夏に就任したトラス首相が大規模な減税政策を掲げたことで、ポンド、英国債、英株式の全てが下落するトリプル安になった「トラス・ショック」が発生。トラス首相はわずか1ヶ月半で辞任することになった。
日本も高市総理が就任してから円と日本国債が下落しており、トラス・ショックに近い状況になりつつある。今後の政策次第では日本版トラス・ショックのようになる懸念は拭えない。
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