天然ガス高騰の影響はこれから出る

今年になって天然ガス価格が高騰している。天然ガスは発電に多量が使われるため、天然ガスの高騰はこれから電気代の上昇となって生活に影響してくることが考えられる。

8月下旬以降にまた上昇

　2021年はいろいろな先物価格が上昇した年になった。昨年後半から今年前半にかけてコーンや小麦といった穀物価格が高騰していたが、それらは4～5月をピークにその後は落ち着いている。

　また原油価格も高騰してきたが、こちらも7月上旬に今年の最高値となる77ドルをつけてからは2ヶ月高値更新がない。全体的に見ると2021年前半の先物高トレンドは、今年後半になって見られなくなったと言っていい。

　しかし9月になってもまだ上昇が続いているのが天然ガスだ。NY先物市場の天然ガスは100BTU単位で取引され、昨年夏にはまだ100万BTU＝1.5ドル付近にあった。その後秋以降から今年にかけて上昇が続き、今年8月中旬には3.9ドルに。そして8月下旬以降はアメリカにハリケーン「アイダ」が上陸したことなどを材料にまた大きく上昇し、9月1日には一時4.7ドルをつけた。

　この水準は2018年秋以来約3年ぶりの高値だが、2018年は4.9ドルが天井だったのでその水準を超えれば2014年以来の高値となる。

　天然ガス価格が高騰している理由はいくつか指摘されている。まず他の多くの資源のように、2020年にはパンデミック開始で各国がロックダウンをしたために需要が大きく後退。だが2021年になるとワクチン接種の拡大から景気拡大見通しが広がり、天然ガス需要の回復見通しも広がって価格が上昇した。

　天然ガス価格の高騰は、これから実生活にも影響が出てくることが考えられる。天然ガスはLNG（液化天然ガス）として日本に輸入され、火力発電の燃料として広く使われている。日本の場合は2011年の福島第一原発事故発生後は原発の多くを停止しているので、火力発電への依存度が高まった。

　天然ガス価格は日本にとって発電コストの上昇につながる。すでに電力各社は燃料費を電気代に転嫁しており、去年の夏に比べると電気代は上がっている。しかし今後天然ガス価格が上がり続ければ、さらに上昇していくことになる。

　そして最近の電力自由化によって東京電力などの地域電力は他社との競争を迫られ、経営に余裕がなくなってきている。そのために不要な火力発電所などを停止する措置を取っており、それが電力の需給をさらにひっ迫させる可能性があると指摘されている。

　すでに9月になり夏はなんとか乗り切ったが、今年の冬は特に寒波がきた場合に電力事情がかなり厳しくなることが予想される。