多くの金属先物銘柄も下落

6月以降天然ガスや小麦など主要先物銘柄価格が下がっている。そしてエネルギー・穀物だけではなく、銅やアルミといった金属先物銘柄の価格もかなり下落している。これだけ先物価格が下がれば、世界的なインフレ圧力の緩和につながることが考えられる。

多くの金属価格が下落

　2021年は株式や仮想通貨だけではなく、商品先物市場も高騰して世界的なインフレ圧力の一端となった。また今年2月以降のウクライナ紛争も先物価格をさらに押し上げた。

　しかし春頃から米金融引き締め開始などを材料に先物高も一服し、さらに6月になって天然ガスや小麦など主要先物価格がかなり下がってきた。そして先物安は、銅やアルミといった金属銘柄にも及んでいる。

　金属価格の国際的な指標は、LME（ロンドン金属取引所）で取引される各銘柄の価格。例えばLMEの銅価格を見ると、2020年春にパンデミック開始時の金融市場暴落で1トン＝5,000ドルまで下げたが、その後は各国の空前の金融緩和などを受け高騰。2021年のGW連休頃には史上初めて10,000ドルをつけた。

　その後は1年間ほど9,000～10,500ドルに留まっていたが、最近は下げが続き7月1日の終値は2021年2月以来となる8,000ドルだった。

　LMEのアルミ価格も同様で、2020年春に1トン＝1,500ドルまで下がった後は上昇。ウクライナ紛争開始直後の今年3月上旬には一旦4,000ドルをつけた。しかしそこをピークに下がり続け、7月1日には2,400ドルまで後退している。

　ニッケル価格も同様だ。2020年春時点で1トン＝10,000ドルだったLMEのニッケル価格は、その後上昇してウクライナ紛争開始直後の今年3月上旬には空売りの買戻しが重なるいわゆる「踏み上げ相場」となって異常な暴騰が起こり、一瞬だが100,000ドルをつけた。この水準はそれまでの最高値である37,000ドルを遥かに更新。だがその後は下げが続き、7月1日の終値は21,500ドルとなった。

　NY市場の価格が国際的な指標となるパラジウムも同様に最近は下落している。パラジウムはガソリン車の触媒として使われ、2016年頃からずっと高騰が続いてきた。パラジウムも他の金属銘柄のようにウクライナ紛争開始直後の3月上旬に暴騰し、一時は3,400ドルを超えて史上最高値を更新。しかしその後は軟調な動きが続き、最近は1,950ドルまで後退してきた。

　このように金属価格がここにきてかなり下げてきている。それ以外も例えば6月8日に100万BTU＝9.6ドルと2008年以来14年ぶりの高値をつけた天然ガスは、その後暴落が続き7月1日には5.7ドルとわずか1ヶ月弱で40％も下落した。

　最近の先物安は、株式や仮想通貨市場と同様に世界的な金融引き締め、特にアメリカの急速な利上げによるリスク回避姿勢の広がりを受けたものと見られる。世界のインフレは先物高だけが理由ではないが、先物価格の下落によって今後多少はインフレが緩和されるのではないかと思われる。