過去2週間に大変動したニッケル

ウクライナ紛争を原因とする原油や小麦の高騰が経済関連のニュースによく出てきているが、ニッケルも過去2週間に通常ではありえないほどの大乱高下が起こった。

7日に異常な暴騰

　ウクライナ紛争で金融市場が大きく動いている。特にロシアが輸出国になっている原油や小麦は3月7日の週に大暴騰した。

　そして原油などと同じくロシアが有力な生産国となっている金属銘柄のニッケルも3月7日以降大暴騰し、その後暴落するという乱高下があった。

　ニッケル価格の国際的指標とされているのは、LME（ロンドン金属取引所）のニッケル先物価格。取引単位は1トンで、2020年春に先物価格が下がった時は1トン＝11,000ドル付近だったが、その後他の先物銘柄と同様に上昇。今年3月4日の終値は28,919ドルだった。

　そして週明け7日になると大変動が始まった。この日は直前の週末にアメリカがロシア産原油の禁輸を検討しているとの情報が流れ、朝方からロシアが産地の原油や小麦などが暴騰した。

　ニッケルも7日には66％も暴騰し、48,078ドルで終了。この時点で2007年につけた史上最高値の37,000ドルを大きく更新した。

　さらにこの日の夜間取引、つまり現地時間の8日午前1時（日本時間午前10時）からの取引で信じられない動きが起こった。開始後数時間はさらに上昇が続き、午前5時半頃には64,000ドルに。そしてその後午前6時までのわずか30分で50％以上も暴騰し、なんと100,000ドルをつけた！

　つまり7日の終値からわずか数時間で2倍以上に跳ね上がった。100,000ドルで一旦止まったがそれから2時間ほど80,000ドル付近での推移が続き、あまりの異常な動きを見てLMEはニッケルの取引を停止。さらに翌9日から15日まで5営業日にわたって取引停止を継続した。

　このような異常な暴騰はいわゆるショートスクイーズが重なったために起こったと見られる。これは日本語では「踏み上げ」と呼ばれるもので、空売りのポジションを持った投資家が価格上昇によって追証がかかり、それも入金できないために強制決済の買戻し発動による動きのこと。踏み上げの買戻しが多く出ると、それがまた価格を押し上げて異常な暴騰となる。

　だが踏み上げによる暴騰は一時的な動きで終わることが多い。16日に取引再開されたニッケルは7日の終値を基準として値幅制限がつけられ、この日は5％の値幅制限いっぱいまで下落して45,590ドルで終了。翌17日は8％ストップ安の41,945ドル、18日は12％ストップ安の36,915ドル、21日は15％ストップ安の31,380ドルで終了とその後もストップ安が続いた。

　しかし22日はストップ安ではない約10％安の28,159ドルで終わり、23日にはついにプラスに転じた。22日の終値は4日の終値とほぼ同じで、7～22日の大乱高下の末に結局元の水準に戻ったことになる。

　踏み上げによって価格が一時的に暴騰するのはどの相場でもあることだが、今月のニッケルはそれが極端に起こった例だった。