ベネズエラが新たに非常事態を宣言

原油安によって経済危機が続くベネズエラは、改善の兆しが全く見えない。そして先週13日には非常事態を宣言し、操業を停止している工場などの取り締まりを開始すると発表した。しかしこれが事態の改善につながるとは全く思えない。

計画停電も拡大している

ベネズエラの経済は、石油への依存度が非常に高いのが特徴だ。輸出の95％が石油と言われており、原油価格が高騰した2010年頃にはそれなりに好景気だった。ところが2014年後半以降に原油価格が急落したため、ベネズエラ経済も同様に急落していった。

原油安によって国家としての収入が急減し、通貨であるボリバルも暴落。食料品などの輸入ができなくなり、インフレが急激に進行。現在のベネズエラのインフレ率は年間700％とも言われており、世界最悪の水準にある。

ベネズエラでは1月にマドゥロ大統領が2ヶ月間の「経済緊急事態」を宣言し、大統領が企業の経営に介入することができるなど、大統領に大きな権限が与えられた。しかし状況は全く良くなっていない。

ベネズエラ経済の惨憺たる状態は、市民生活を見ればすぐにわかる。パンやミルクなど基本的な食料品が不足し、手に入れるためには長い列に並ばないといけない。停電は日常茶飯事になり、1日2回・2時間ずつの計画停電も実施。最近ではそれが4時間連続になった。これだけ長い時間停電があると、冷蔵庫の食料も傷みが激しくなる。

また電力不足や賃金が支払えないなどの理由で、公務員は週休3日にされた。そして最近になるとさらに週休5日にされてしまった。

経済の急激な悪化により、マドゥロ大統領への不信も高まっている。野党は大統領の罷免を要求し、国民もそれを求めた署名集めなどをしている。しかし大統領は辞める気配はなく、2019年の任期満了まで職務を続けるつもりでいる。

そのような状況で出されたのが、先週13日の非常事態宣言だ。大統領はこの宣言に基づいて、操業を停止した工場の差し押さえや経営者の逮捕などを実行すると述べている。だがそれで経済が好転する可能性は低い。

このまま行くと、ベネズエラの経済は破綻しデフォルト状態になると見られている。ベネズエラには1000億ドル（約10兆9000億円）ほどの対外債務があって、デフォルトしたらそれらの債権国にも影響する。

ただし根本的な問題が原油安にあるので、すぐに改善することは難しい。原油は最近になって50ドル近くに戻ってきたが、この水準は産油国の経済が立ち直れるほどではない。そして原油の低価格が続くと、ロシアや中東諸国など他の産油国まで厳しい状態になると予想されている。