ハマスの攻撃で週明けは原油が急騰

日本時間で7日土曜の正午過ぎに、中東のガザ地区を実効支配するハマスがイスラエルに対して大規模攻撃を開始。イスラエルはすぐに報復の空爆などを行い戦闘が拡大。その結果週明けの原油相場は一時先週終値から5ドル近く急騰した。

天井のない監獄

　日本時間で7日土曜の正午過ぎ（現地時間午前6時半頃）に、中東のガザ地区を実効支配する過激派組織・ハマスがイスラエルに対してロケット弾などを使用した大規模攻撃を開始した。イスラエルはすぐに報復行動としてガザ地区に対して空爆などを行い、両者の戦闘は9日までの約48時間ですでに1,100人程度の死者を出した。

　今回なぜハマスがイスラエルを攻撃したか、それを理解するためにはこの地域の複雑なパレスチナ問題を理解しなくてはならない。ユダヤ人は第2次大戦終了直後の1948年にこの地域にイスラエルを建国し、以前から住んでいたパレスチナ人たちとの長い争いが始まった。

　1948年から73年まで4回の中東戦争を経て、1988年にはパレスチナ人の国であるパレスチナ国が建国。その後の交渉でイスラエルの西にあるガザ地区もパレスチナの一部として認められた。

　2005年までにはそれまでガザ地区にいたイスラエル人や軍隊を撤退させた。しかし2007年にパレスチナの過激派組織・ハマスがガザ地区を実効支配するようになったことで、イスラエルはガザ地区を完全封鎖して約200万人の住民が出られないようにした。そのためガザ地区は「天井のない監獄」と呼ばれている。

　住民が出入りできないだけではなく物資の出入りも厳しく制限されているため、ガザ地区は常に物資不足で電気も不安定な非常に厳しい生活が続いている。また1998年には国際空港が開港したのだが、すぐにイスラエルによって破壊されその後再開はされていない。

　このように厳しい生活を強要されていることで、ガザ地区の人々やハマスにはイスラエルに対して不満どころか憎しみがどんどん募っている。2007年の封鎖以来ハマスとイスラエルの間では何度か戦闘が起こり、直近では2021年5月に戦闘があったがこの時は11日間で終了した。

　これだけの長い憎しみと争いの歴史があるため、ハマスは隙があればいつでもイスラエルを攻撃するための準備を行っていた。そして先週末の7日土曜に、ハマスは多数のロケット弾などを使用してイスラエルへの攻撃を開始。同時にガザ地区と外部を隔てていた壁も、ハマスによって数ヶ所で突破されたという。

　イスラエルはすぐに空爆などで報復を開始しており、9日日中までの約48時間で両者の死者数はすでに1,100人にもなったと言われている。

　この攻撃によってかなり大きな影響を受けた市場は原油だった。先週は軟調な動きが続き82ドル台で終了したNY原油は、週末のハマスによる攻撃のため週明けは上窓を開けて85ドル付近からスタート。午前10時頃には一時87ドルをつけたが、その後は下げに転じている。

　今回の攻撃はガザ封鎖以来最大とも言われており、2021年のように短期間では終わらない可能性も高い。アメリカはいつものようにイスラエルを支持すると宣言しており、EUも同様でハマスの軍事的・外交的劣勢は明らかだ。しかしすでに人質としてイスラエル人を拉致しているという情報が流れており、人質がいると解決まで長引くことが考えられる。

　中東の情勢は今後どう転ぶか予想するのが非常に難しい。展開次第では原油価格がまた上がることも考えられる。