スズ価格も高騰し史上最高値

パンデミックによるサプライチェーンの乱れや金融緩和のために多くの物が値上がりしている。そして金属である銅やアルミと同様に、スズ価格も昨年以来高騰。最近になって史上最高値を更新した。

10円玉の材料にも

　2021年になってあらゆる物の値段が上がっており、世界的にインフレ傾向が鮮明になっている。先物市場では年前半はコーンや大豆といった穀物の価格が高騰していたが、これらは4～5月をピークにその後は落ち着いている。

　その一方で原油、天然ガス、石炭などエネルギーは夏以降も高騰。そして銅、アルミ、ニッケルといった金属銘柄も今年になって価格が上昇しており、スズもまた最近史上最高値を更新した。

　スズは漢字では「錫」と書くがあまり使われない漢字なのでここではカタカナ表記にする。スズは合金の青銅の材料になるので、日本の10円玉にわずかながら含まれている。また鉄鋼をスズで表面処理したものがブリキと呼ばれる。さらにインジウムと混合して酸化させた酸化インジウムスズは、液晶ディスプレイなどに使われる。スズの主な生産国には中国、インドネシア、ペルーなどがある。

　そのスズ価格が、今年になってから高騰。スズ価格の国際的な指標として使われるのはロンドン金属取引所（LME）のスズ先物価格。取引単位は1トン。1990年代は他の先物と同様価格は安定しており、1トン＝5,000ドル前後で推移していた。

　それが2000年代になってから上昇し、2011年にはそれまでの最高値となる30,000ドル強をつける。その後は最高値の更新はなく2020年夏にはパンデミックによる景気低迷から15,000ドルまで下げたものの、秋以降上昇。2021年になると上昇が加速し2011年につけた最高値を更新して9月には35,000ドルを超えた。

　高騰の原因の1つに他の先物と同様、各国中銀による金融緩和があると見られる。その他には産地である東南アジアで最近感染が拡大し生産に支障が出ていることや、中国でも生産が削減されていることなどがある。

　スズ価格が高止まりすれば、影響ディスプレイなどスズを使った製品の値上がりは必至となる。すでに銅やアルミといった他の金属も高騰しており、多くの金属製品が今後値上げされることになる。

　原油価格が上昇すれば石油製品であるプラスチックの値段も上がる。多くの素材が値上がりし世界のインフレ圧力はますます強まっていくが、各国は緩和を続けておりこの傾向はまだしばらくは続くことになる。