スイスがマイナス金利を導入

スイスフラン高をなんとしても食い止めたいスイスは、18日にマイナス金利の導入を発表した。ECBは6月にすでにマイナス金利を導入しているが、それに続いてスイスもマイナス金利を設定したことになる。世界的な超低金利時代は、「マイナス金利時代」に突入するところまで来た。

1.2の上限防衛のために導入

今日スイス中銀であるスイス国立銀行（SNB）が発表したのは、市中銀行が中央銀行に資金を預ける時に適用される金利を－0.25％に設定するという内容だ。これは全ての資金に適用されるわけではなく、中銀に預ける額のうち1000万スイスフラン（約12億1000万円）を超える部分に適用される。なお適用は、来年1月22日から開始となる。

同様の中銀に預ける場合の金利をマイナスにする措置は、6月にECBがすでに導入している。ECBの場合は中銀預金金利と呼ばれる市中銀行がECBに預ける際の金利を、－0.1％まで引き下げた。ECBは9月にさらに中銀預金金利を引き下げ、－0.2％にしている。

ECBの場合、マイナス金利の導入目的は景気の低迷とデフレに対抗するためという色合いが濃かった。しかしスイスの場合は、どちらかというとスイスフラン高を抑制するために金利をマイナスにした。

スイスフランは比較的「安全通貨」と見られていて、リーマンショック以降買われることが非常に多くなった。日本も一時期過剰な円高で苦しんでいたが、スイスもそれは同じだった。2011年にはユーロ/フランレートが、史上初となる1:1にまで近づいたほどだ。

しかしそこでスイス中銀が動き、2011年9月にユーロ/フランレートの上限を1.2に設定した。そしてその上限を防衛するために「無制限の為替介入で対抗する」と発表した。市場はこの発表に対してすぐに反応し、当時1.2より下にあったユーロ/フランのレートは瞬時に1.2まで上昇。その後3年以上にわたって、ユーロ/フランは一度も1.2を下回っていない。

ただ最近になって、ユーロの下押し圧力はさらに高まっている。ECBがマイナス金利を導入したため、ユーロ売り材料が増えた。またユーロはすでにABSの購入プログラムを開始し、今後は国債購入もする予定があると見られている。

このような金融緩和政策から来るユーロの売り圧力に対してスイス中銀は介入を行ってフランの上限を防衛しているが、それだけで防衛しきれるかわからないところまでユーロ下落の圧力が強くなった。そのために、今日マイナス金利の導入を発表することになったのだ。

しかしこの措置だけで、今後もずっと1.2の上限を守れるとは限らない。SNBのジョルダン総裁は今日の会見で「必要な場合は追加措置を取る」と述べていた。ECBやSNBが導入したようなマイナス金利は今後他国も導入する可能性があり、世界の金利はマイナス金利時代に突入している。