コンテナ船運賃の高騰もインフレ要因

大規模金融緩和や原油などの先物高、そしてサプライチェーンの混乱など、現在の世界には複数のインフレ要因が存在している。さらにコンテナ船運賃も昨年以来高騰しており、それもまたインフレ要因になっている。

運賃の指数も明確に上昇

　2021年になってから世界各国でインフレ傾向が目立ってきている。インフレになる要因は複数あるが、まずはアメリカなど主要国が行っている大規模な金融緩和。緩和マネーがいろいろな財・サービスに流れ、それが価格を押し上げている。

　原油などの先物価格の高騰も大きい。大豆やコーンなどの穀物は昨年秋から今年の春にかけて上昇したが、春以降は落ち着いてきた。また原油も最近では高値更新が見られない。だが天然ガス価格は9月になっても今年の最高値を更新している。

　さらにパンデミックによるサプライチェーンの乱れもある。そしてこれらに加えて、海上輸送に必要なコンテナ船運賃の高騰もインフレ要因として存在している。

　コンテナ船運賃を表わす数字にフレイトス・バルチック国際コンテナ指数（FBX）というものがある。これは主要海運会社12社から、主要な14航路の運賃をヒアリングしてまとめた数字になる。

　2018年末から算出が始まった比較的新しい指数だが、2020年夏頃までは1,500ドル前後で安定推移していた。しかし20年秋から上昇が始まり、2021年9月になると10,500ドルとかつての安定期の7倍にまで高騰した。

　またバルチック海運指数（BDI）という指数もある。こちらも世界の主要海運会社からヒアリングをした結果を基にして集計される数字。BDIはかなり以前から使われており、1985年1月4日時点の水準を1,000とした相対的な数字で表される。

　BDIは1990年代は1,000～2,000で安定推移していた。だが2000年代になると上昇し、2007～08年には10,000を超えるところまで高くなった。

　しかしこの高騰はバブルが弾けるように急激に終わり、2009年以降は最近まで再び1,000～2,000を中心としたレンジ内に留まっていた。それが2020年夏頃から上昇し、今年8月には一時4,000を超えた。

　FBXもBDIも2021年になって上昇しており、コンテナ船運賃は確実に上がっている。運賃上昇の要因は複数考えられているが、世界経済が回復に向かっていることからコンテナ船の需要が増大していることや、人出不足が主な要因と見られる。

　多くの製品が船便で運ばれるため、コンテナ船運賃の高騰は多くの製品価格の上昇となって反映される。製品価格の上昇はインフレとなり、インフレによって各国中銀は金融を緩和から引き締めに転換せざるを得なくなることも考えられるだろう。