すでに世界の主流はIEOからIDOか

企業がトークンを発行して取引所を通して不特定多数の投資家に販売するIEOは、日本ではこれまで9例、世界では多数が実施されてきた。しかし海外ではすでにトークン発行による資金調達は、IEOではなくIDO方式の方が主流になっているとの見方が強い。

全体の80％とのデータも

　企業が独自のトークンを発行し、仮想通貨取引所を通して不特定多数の投資家に販売して資金を調達するのがIEO（Initial Exchange Offering）だ。2017年頃にはIEOの前身として取引所を通さず直接投資家に売るICO（Initial Coin Offering）が多く実施されてきたが、取引所を通さないため詐欺まがいの案件も多くすぐに廃れてしまった。

　その後普及したIEOは世界では多数が行われてきたものの、日本では規制が厳しいこともありこれまでわずか9件しか行われていない。9例目となるファンプラ（FPL）は11月に行われ、これまでのところ2025年で唯一の国内IEOとなった。

　とはいえ現在では海外でもIEOは廃れつつあり、代わりにIDO（Initial DEX Offering）が台頭している。IDOとは基本的にはIEOと同じようなものだが、既存の中央集権型取引所ではなくDEX（分散型取引所）を通してトークンが販売される。

　DEXとは、運営側は売買に関与せずに売買の場だけを提供し、ユーザー同士で仮想通貨が売買できる取引所のこと。いわば仮想通貨のフリーマーケットと言ってもいい。海外ではすでに多数のDEXが存在しており、代表的なものにUniswap（ウニスワップ）があるが、日本では規制が厳しく残念ながらDEXは生まれていない。

　IDOがすでにIEOに代わり主流になりつつあるとのデータもある。IEOやIDOの正確な件数のデータは入手が難しいが、ある仮想通貨業界の研究機関によるとすでに企業のトークン発行の80％はIDOで行われているという。

　IDOがIEOに代わって主流になった理由はいくつか考えられる。まずIDOはIEOと比べて実施のハードルが低い。というのもIEOの場合は扱う取引所の厳しい審査に通らなくては扱ってもらえないが、IDOは運営が売買に関与しないDEXを通すので審査が緩く簡単に実施できることがある。

　またIEOは取引所が審査をするだけに年間に取り扱える件数にも限りがあるのに対し、IDOの場合は1ヶ所のDEXがIEOより遥かに多くを扱える点も大きな要因と見られている。

　さらにDEX自体が近年非常に広く普及している点もある。以上のような理由でここ数年はIEOからIDOへのシフトが急速に進み、研究機関の見通しのようにすでに80％はIDOになっていると見られる。実際にある海外大手取引所では、2025年になって実施されたIEOがほとんどなくなっている。

　ところで日本の現状はどうだろうか？日本はこれまでわずか9例のIEOが行われたのみで、かつここ最近2～3件のIEOは上場後のトークン価格が低迷している。残念ながら日本のIEOはあまり盛り上がっていない。

　この状況では日本では海外のようにIDOが広く行われる可能性はかなり低いのではないかと思われる。IDOに参加したいなら、海外のDEXに口座を開いて参加するしかない。