EUが大規模な仮想通貨規制法案を可決

FTX破綻以来仮想通貨の規制に対する機運が世界的に高まっており、EUは20日に仮想通貨の大規模な規制法案を圧倒的多数で可決。このような規制は今後他国にも広がり、仮想通貨が法定通貨と同様に規制されるようになってくると予想される。

他の金融商品同様の規制

　昨年11月に海外大手仮想通貨取引所のFTXが破綻してから、仮想通貨業界が十分規制されていないという懸念が世界的に高まった。

　日本はすでにかなり規制が厳しいので、日本の取引所は多くの仮想通貨を扱えない反面、FTX破綻後もFTXの日本法人に預けていた顧客資産は無事出金をすることができた。

　しかし海外ではそこまで規制が厳しくない国が多い。アメリカはこの事態への懸念からか、最近では証券当局のSEC（証券取引委員会）が多くの仮想通貨企業を提訴・告訴するようになった。

　そしてEUでも仮想通貨に対する規制強化論が台頭。議論の末に今週20日に欧州議会が規制のための法案「仮想通貨市場法案（MiCA）」を採決し、賛成517：反対38：棄権18の圧倒的多数で可決した。

　この法案の主な内容を述べると、まず仮想通貨事業を行う企業はEU圏内のいずれかの国で登録をすることが義務付けられる。そしてもともと証券業界を監督する機関だった欧州証券市場監督機構（ESMA）には、仮想通貨業界を監督するための大きな権限が与えられる。

　圏内で業務をする仮想通貨取引所は、顧客に対し取引開始前に仮想通貨取引のリスクを説明することを求められる。これは証券会社が顧客に対するリスク説明を義務化されていることに等しい。

　またステーブルコインの発行業者は、発行した量と同じだけの金額を保証金として保持することを義務付ける。

　そして20日の欧州議会では、もう1つ仮想通貨の資金移動に関する法案を採決。賛成529：反対29：棄権14の圧倒的多数で可決された。これは一定額以上の仮想通貨を送金する際に、依頼人や送金先の情報を報告させてマネーロンダリングやテロ資金供与といった犯罪を防止するためのもの。

　この法案に対する懸念からか、20日夕方以降仮想通貨市場が大幅下落している。ビットコインは20日午後5時前の405万円から、24時間後には7.5％安の375万円まで下落。イーサリアムは20日午後5時前の28万円から24時間で9％下落し25万5000円に。バイナンスコインは同じ24時間で4万5500円から4万2500円まで6.5％下落。リップルは70円から63円まで10％も下落と、主要4通貨は全て大幅安となっている。

　これまでは各国の政府の知識が追い付いていないこともあり比較的規制が緩かった仮想通貨業界だが、FTXの破綻を経て規制強化は世界的な流れとなっている。