Doordash上場でソフトバンクGはまだ安泰か

アメリカでシェア1位のフードデリバリーアプリを運営するDoordashが、12月にも米株式市場に上場する見通しになってきた。この企業にはソフトバンクグループが出資しており、上場することで同グループはまた大きな利益を得られる見通しだ。

創業は2013年

　ウーバーイーツや出前館など、日本でも多くのフードデリバリーアプリが使われるようになってきた。そして2020年になってCOVID-19（新型コロナウイルス）が世界中で大流行し、外食よりも料理を配達してもらって自宅で食べる方が好まれるようになった。

　そのためフードデリバリーアプリは今年になってますます普及が加速。そしてパンデミックの影響で解雇された人々にとっても、アプリを通したフードデリバリーの仕事は当面の生活費を稼ぐための収入源になった。

　日本ではほとんど使われていないが、アメリカでフードデリバリーアプリとして1位のシェアを持つのがDoordash（ドアダッシュ）で、シェアは約50％に達する。日本ではよく使われるウーバーイーツは、約25％のシェアになる。

　Doordashは2013年に創業され、その後日本のソフトバンクグループが運営するソフトバンク・ビジョン・ファンド（以下、「SVF」）が出資している。そしてアメリカで順調にシェアを伸ばし、同業他社なども買収で獲得しつつ2020年には上場を申請するに至った。

　最初に申請したのは今年2月なのだが、その後パンデミックのためにロックダウン（封鎖）が行われるなどの事情のためなかなか上場審査は進まなかった。しかし年末になって、ようやく上場が実現しようとしている。

　現在公募が行われているが、価格のレンジは1株あたり75～85ドルとなっている。この価格に基づいて上場後の時価総額を計算すると、238億ドル（約2兆5000億円）から270億ドル（約2兆8000億円）になる。

　SVFはこれまでDoordashに11億ドル（約1,150億円）程度を出資し、現在の保有比率は約20～30％と言われる。仮に公募価格レンジの中央値・80ドルが現在の価値だとすると、時価総額は254億ドル（約2兆6500億円）になり、ソフトバンクGが保有する株の価値は50億ドル（約5,200億円）から76億ドル（約7,900億円）になる。

　11億ドルの出資で50～76億ドルものリターンが得られればその投資はかなりの成功と言ってもいい。ソフトバンクGは2020年3月期の決算で、営業損益が1兆3646億円の赤字、純損益が9,615億円の赤字と巨額の赤字になった。この時は同社が経営危機に陥るのではないかと市場が懸念したのだが、今回のDoordashのような投資の成功例があると、まだまだ同社は安泰に見える。

　しかし懸念がないわけではない。Doordashは上場申請したとはいえウーバーなどこの業界の他社のように、赤字決算が続いている。同じく近い将来上場する民泊サイト運営のAirbnbもそうだが、赤字続きでも上場できてしまうのが米株式市場だ。だが赤字が続けば将来的な株価の上昇はあまり期待できないかもしれない。