ADR（米国預託証券）について知ろう

アメリカの株式市場には、ADR（米国預託証券）という証券が存在している。これは株式とは少し違うが、株式と同じように取引できるものだ。投資をするなら知っておいて損はない。

外国株を米国市場で売買

ADRを一言で説明すると、「外国株（米国株以外）の代わりとして取引できる証券」と言える。つまりアメリカの市場で米国株以外の株が直接上場していない状態でも、取引できる証券なのだ。

その仕組みを簡単に言うと、アメリカの金融機関が外国の株式を買い集め、その「預かり証」を発行する。発行された預かり証がADRで、投資家はそれを自由に売買できる。ADRを保有していると、株主としての権利も発生する。

投資家にとってのADRのメリットは、中国やインドなど規制によって外国の投資家が株を売買しにくい国の株式を、アメリカ国内で自由に投資できる点にある。ADRは日本企業のものも数百銘柄発行されており、日本企業以外も合わせると数千銘柄ある。

そしてADRには、いくつかの種類がある。一番発行条件が緩い「レベル1」ADRは、NYSEなど証券取引所では売買ができず、店頭取引のみが許されているものだ。またレベル1の中には、「スポンサーなし」のADRがある。これは株式の発行企業の許可なくして発行されたADRという意味。つまりADRは、株式を発行する外国企業に断らなくても、アメリカの金融機関が発行したいと思えば発行することができる。スポンサーなしADRは2008年に規制緩和によって発行可能になったが、その後激増した。

一方株式の発行企業に許可を得て発行しているADRは「スポンサーあり」と言われる。なおスポンサーなしはレベル1のみ可能で、これから話すレベル2～3はスポンサーがないと発行できない。

「レベル2」のADRは、レベル1のように店頭取引だけではなく、NYSEなど証券取引所に上場することが可能になる。さらに「レベル3」はそれに加えて、公募増資として新規発行ができるようになる。

ADRのメリットは外国株を取引できることであるが、その中には日本株も含まれる。つまり日本人がアメリカに在住する機会があったら、ADRを使って日本の株を現地で取引できる。またドル建てなので為替リスクがない。

日本企業のADRは、トヨタやパナソニックを初め、東証1部の優良企業なら多く発行されている。日本の株や、あるいは中国やインドなど普通は取引できない国の株を取引するために、ADRを利用してみると面白い。