3AC破綻で仮想通貨市場に広がる懸念

シンガポールの3ACという仮想通貨ファンドが、今週になって裁判所から清算を命じられた。このファンドは多くの仮想通貨企業とも取引関係にあり、清算によって他の企業も連鎖倒産するのではないかと仮想通貨市場に懸念が広がっている。

取引先も倒産か!?

　シンガポール発の「Three Arrows Capital（3AC）」という仮想通貨に投資をするヘッジファンドが、今週になって英領バージン諸島で裁判所から清算を命じられていたことがわかった。

　3ACがこのようになった最大の原因は、仮想通貨のテラに投資をしていたためと見られる。同名のステーブルコインと仮想通貨の両方が存在していたテラだが、5月になってステーブルコインは米ドルとのレート連動が破綻。さらに仮想通貨の方は短期間のうちに価値がほぼゼロになった。

　3ACはテラに5億6000万ドル（約760億円）も投資していたため、テラが破綻したことでそれらが全て損失になった。テラ破綻後3ACの運営は相当厳しくなると見られていたが、今週になってついに裁判所に清算を命じられてしまった。

　3ACの破綻によって、同社と取引や融資関係にあった複数の会社に対する懸念が広がっている。3ACと取引のあったFinblox（フィンブロックス）という企業は、清算を命じられる前の16～17日頃にはすでに、顧客の出金を毎月1,500ドル（約20万円）に制限すると発表した。

　香港の仮想通貨レンディング企業であるBabel Finance（バベル・ファイナンス）は3ACにレンディングをしていたと見られるが、17日に顧客資産の出金を停止した。またVoyager Digital（ボイジャー・デジタル）という企業も3ACに数億ドル（数百億円）の融資を行っていたため、清算によって多大な影響が出ると懸念されている。

　去年は高騰していた仮想通貨市場が今年になって下落に転じたことで、多くの仮想通貨関連企業でビジネスモデルが崩れ経営が傾きつつある。アメリカの仮想通貨レンディング企業・Celsius（セルシウス）は今月13日に突然顧客の出金を停止し、その後は破産を申請するとの観測も流れている。

　また米仮想通貨取引所のコインベースは、今月になって全世界の従業員の18％を削減する計画を発表した。

　3ACの清算命令などを受けて30日の仮想通貨市場はまた軟調な展開となり、ビットコインは午後以降下落して夜には250万円台に。イーサリアムも13万円台まで下落し、昨年の最高値の4分の1になった。

　肝心の仮想通貨市場が低迷しているため、3ACやCelsiusのようなケースはこれからも出てくると予想される。去年は全てが上手く行っていた仮想業界は、今年は残念ながら負のサイクルに入ってしまったようだ。