迫るスコットランドの独立投票

これまでイギリスの一部として長い間存在してきたスコットランドだが、最近イギリスからの独立を望むようになってきた。そして9月18日に、ついにスコットランドの独立の是非を問う住民投票が行われる。

スコットランド人は独立希望

もともとイギリスという国は日本のように一枚岩ではなく、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの4つの国から成る連邦国家だった。そしてスコットランドに住むのはスコットランド人が多数で、イングランド人が住民の多数を占めるイングランドとは人種的に見ても別の国でもおかしくなかった。

政治的にはイギリスという1つの国として統合され、ポンドという1つの通貨も持っている。しかし多くの面でイングランドとスコットランドは別行動をとっている。例えばサッカーなどのスポーツでは、「イギリス代表チーム」は存在せず、「イングランド代表チーム」「スコットランド代表チーム」と別々になっている。

このようにいろいろな意味で違いの大きいイングランドとスコットランドだが、それでもスコットランドが最近までイギリスの一部で満足していたのは、経済的にイギリスの一部でいた方が都合がよかったからだ。

しかしそれが少しずつ変わっており、最近ではスコットランド人も「イギリスから独立してもやっていけるのではないか？」と考え始めている。そして2011年5月のスコットランド議会選挙では、イギリスからの独立を掲げたスコットランド国民党（SNP）が勝利した。SNPは与党になってからイギリスからの独立を求める住民投票の実施を宣言し、今日に至る。

ポンド/円の分析はこちらでご覧頂けます。

最近まではスコットランド人の中でも独立に賛成する者は30％程度で、住民投票を実施しても否決されると思われてきた。しかし独立賛成派は少しずつ増えていき、先週行われた世論調査ではついに賛成派が過半数だった。

この独立投票は、結果次第では欧州全体を激震させるようなものだ。欧州にはスコットランド以外にも、スペインのバスク地方など現在の主権国から独立を望んでいる地方がある。スコットランドが独立するようなことになれば、これらの地方でも独立運動がさらに高まることになる。

スコットランドが独立したとすると、一番イギリス（イングランド）との争いの種になると思われているのが、北海油田の権益だ。これまではイギリス政府が北海油田の権益を持っていたが、スコットランドが独立したら当然それを主張してくる。北海油田とは単一の油田ではなく、北海にあるたくさんの油田やガス田の総称だ。そのため、たくさんある油田について1つ1つイギリスとスコットランドが「これはわが国のものである」と主張し始めるのは容易に想像できる。

そしてスコットランドが独立したら、これまでイギリスの通貨だったポンドはどうなるのか？スコットランドは別の国になるので、当然独自の通貨を設けなくてはいけない。イギリスはこれまでのGDPの一部を失ってしまい、また場合によっては北海油田も失うことになる。これはイギリス経済にかなりの混乱をもたらし、また大打撃にもなりかねない。そういった意味では、ポンドは上がるよりも下がる可能性の方が高いのではないだろうか？

ともかく、住民投票は9月18日に迫っている。この日は、ヨーロッパの歴史が動く日になるかもしれない。