米政府がベトナムの通貨政策を「不当」と結論

著者鳥羽賢

2021年1月17日

米通商代表部（USTR）が15日にベトナムの通貨政策に関する詳細な報告書を公表。その中でベトナムが採っている通貨政策は、通貨・ドンを安く抑えるための「不当な」政策であると結論づけられていた。

中銀が為替市場に介入

　米通商代表部（USTR）が、15日になってベトナムの通貨政策に関する詳細な報告書を公表した。

　アメリカは半年に1回、主要な貿易相手国の通貨政策について調査・報告するための為替報告書をまとめている。主要な貿易相手国には当然ながら日本や中国も含まれる。そして昨年12月にまとめられた直近の為替報告書では、すでにベトナムが「為替操作国」であると認定されていた。

　今回15日に公表されたUSTRの報告書は、通商問題に対処するための通商法第301条に基づいて調査しまとめられたもの。301条はアメリカと他国の通商問題について報じられる時、よく名前が出てくる法律。

　USTRの報告書では、ベトナムがその通貨・ドンを安く抑えるために「不当な」通貨政策を実行しているとのことだった。

　ドンについて簡単に話すと、2021年1月15日現在のドンの対米ドルレートは1ドル＝23,000ドン付近。対円では1ドン＝0.0045円となっている。これらのレートが示すように、1ドンの価値は非常に小さい。

　そして最近数年の米ドル/ドンの推移を見ると、2018年後半から2年半ほど現在の1ドル＝23,000ドン付近であまり動かない状態が続いている。USTRによるとこれは過小評価であり、本来のドンはもっと高いレートになるべきとされた。そしてベトナムがドンを安く抑えているため、米企業の活動が阻害されていると述べていた。

　USTRの報告書によれば、「不当」とされるベトナムの通貨政策は以下のようになる。まずベトナムの中銀は、毎日米ドル/ドンの「基準レート」を発表する。基準レートは前日の米ドル/ドンレートの加重平均や、他のいくつかの要素によって決定される。

　そして国内の金融機関に対し、基準レートから上下3％以上離れたレートでの米ドル/ドンの取引を禁止している。またそれ以外にも、レートが基準レートから大きく乖離しようとした場合は介入などによってレートを一定の範囲内に抑えているという。

　報告書ではこういった行為を「不当」だと結論づけたが、現時点では為替操作国に対する制裁関税などは課さない。ただし今後も状況を是正するためにあらゆる手段を取るとのことだった。

　ベトナムは政治的に見ても共産党一党独裁体制であり、日米などの複数政党制の国とは違う。そういった国であるため、通貨政策も市場の原理に任せた変動相場制は採っていないとしても不思議はない国だ。

この書類に含まれる素材はiFOREXではなく、独立した第3機関により作成されたもので、いかなる場合においても、直接的・間接的、明示的・暗示的にかかわらず、投資に対する助言や、金融商品に関する投資戦略の推奨、提案として解釈すべきものではありません。この書類に含まれる過去の実績や、それに基づくシミュレーションは将来の成果を保障するものではありません。
すべての免責事項はこちらをクリックしてご確認ください。