業種を超えて広がるNFTビジネス

昨年以降世界で拡大しているNFTは、今年になっても衰える気配がない。最近では映画や服飾ブランドもNFTビジネスと関わるようになっており、NFTはすでに仮想通貨業界だけに留まらず業界を超えて拡大している。

ヴィトンもNFTに参入

　NFTとは「Non-Fungible Token」の略で、日本語で言うと「代替不可能なトークン」となる。仮想通貨は同じ通貨が多数発行されても全て同じものでしかないが、NFTのトークンは1枚1枚に識別情報がついて固有のものとして発行される。

　そしてデジタルの画像や音楽などにNFTを紐づけることで、コピーのできない唯一無二の資産としてインターネット上などで売買ができる。そのような売買を中心としたNFTビジネスは2021年以降世界で急拡大してきており、2022年になっても衰える気配がない。

　最近ではNFTを使った多くの新しいビジネスが行われている。まず最近アメリカで人気が出ているのが、「BAYC」のNFT。BAYCとは「Bored Ape Yacht Club（ボアード・エイプ・ヨット・クラブ」」の略。Apeとは猿のことなので、文字通り猿を使ったイラスト約1万点をNFTをつけて販売しているもの。

　BAYCは非常に人気のあるコンテンツとなっており、アメリカではセレブ達もBAYCを購入している。歌手のマドンナはあるBAYCを日本円で6,000万円以上出して購入した。BAYCを制作しているのはYugaLabs（ユガ・ラボ）という企業で、この企業は未上場ながらすでに企業価値は日本円で5,000億円ほどになっている。

　4月12日になるとすでに上場している大手仮想通貨取引所のコインベース（銘柄コード：COIN）が、BAYCを使った映画の制作を行うと発表した。これは1作だけではなく、全3部作のシリーズ映画になるとのことだ。

　昨年12月にはYugaLabsが、ゲーム企業のAnimoca Brands（アニモカ・ブランズ）とともにNFTゲームの開発事業を行うと発表した。このゲームも最近増えているプレイしながらトークンがもらえるタイプのゲーム。つまりゲーム内でもらったトークンを換えることでリアルマネーが稼げる。

　NFTビジネスの広がりの例はBAYCだけに留まらない。すでにルイ・ヴィトンなど有名服飾メーカーもNFTビジネスへの参入を発表している。

　また今月になって、コーヒーチェーンのスターバックスもNFTへの参入を発表した。スタバが行うNFTビジネスの詳細はまだ明らかになっていないが、これまでNFTや仮想通貨とは全く関わりのなかった外食企業までがNFTビジネスに参入してきている。

　そして今週にはソニー（銘柄コード：6758）の子会社が、ソフトウェア企業のSun Asterisk（銘柄コード：4053）と共同でシンガポールにNFT企業を設立するとの情報が流れた。新企業は主に他企業のNFT事業を支援する企業になるという。

　以上のように今年になって多くの業界の企業がNFTビジネスへの参入を発表している。NFTはもはや単なるブームではなく、今後は社会生活に根付いた存在になるのかもしれない。