日銀追加緩和で銀行の口座維持手数料導入が近づく

国内外の景気が後退に向かっているため、日銀が追加緩和を打ち出すのではないかという観測が高まっている。しかしこれ以上緩和をすると銀行経営が圧迫されるため、預金口座に維持手数料が導入されるとの見方がある。

国内ではシティバンクが導入

日銀は2013年4月以来異次元緩和政策を続けてきたものの、目標とする物価上昇率2％は6年以上経った現在になっても達成できていない。そのため2014年10月には大規模な追加緩和を打ち出し、さらに2016年には細かく何度かに分けて追加緩和を発表してきた。

2016年に打ち出した緩和の1つがマイナス金利政策なのだが、この政策によって銀行の経営がかなり圧迫されているとの見方が高まっている。特に経営基盤の弱い地方銀行は、ここ数年かなり苦しい状態に追い込まれている。

このような状況や新たな追加緩和の選択肢が少なくなっているため、日銀は2016年7月以来3年以上追加緩和を発表していない。だが今年になって国内外の景気後退色が強まり、日銀への追加緩和圧力が高まっている。

そこで近いうちに日銀が追加緩和を発表するのではないかと見られているが、その中でも銀行への影響が大きいのがマイナス金利の深堀だ。2016年1月に発表したマイナス金利は、市中銀行が日銀当座預金に預けた場合、一部に－0.1％の金利がかかるというものだった。

数年前からマイナス金利を導入していたユーロ圏は、今年9月にはそれまで－0.4％としていた中銀預金金利を－0.5％に一段と引き下げた。ECBがマイナス金利の深堀政策を打ち出したので、日銀も追随する環境ができてきた。

マイナス金利の深堀が行われると、銀行は普通預金口座にも口座維持手数料を導入するのではないかという議論が高まっている。海外では比較的一般的な口座維持手数料だが、日本の銀行はほとんど導入していない。

日本の銀行は口座維持手数料を導入していなかったのに対し、日本で業務を行う海外の銀行はすでに導入していた。それがシティバンク銀行だ。シティバンク銀行は米金融大手シティ・グループの日本法人で、かつては日本でも個人向けに預金口座を提供していた。そしてシティバンク銀行の口座は、例えば残高が30万円未満だと口座手数料を徴収される仕組みだった。

しかしシティバンク銀行は今から数年前に、個人向け業務を三井住友グループ系のSMBC信託銀行に売却。SMBC信託銀行が引き継いだが、今でも一定条件を満たさないと月2,000円の口座維持手数料を取られるようになっている。日銀がマイナス金利を深堀した場合、他の銀行でも同様の口座維持手数料が導入される可能性が出てくる。

ただし導入するなら複数の銀行が一斉に行うと思われる。というのも少数の銀行が導入すると、預金者はそこを避けて他行に資金を移すだけに終わる可能性が濃厚だからだ。実際に考えられるシナリオは、まずメガバンク3行が一斉に導入し、地銀など他の多くの銀行がそれに追随するというもの。地銀は基本的にメガバンクの動向を注視し、メガバンクが導入したら後を追うという姿勢と思われる。

全ては日銀が追加緩和をするかどうかだが、今後景気がさらに悪化すれば追加緩和も十分考えられる。そうなると銀行の口座維持手数料も現実味を帯びてくる。