仮想通貨下落で国や企業に損失も

昨年暮れから多くの仮想通貨が下落しており、ビットコインは最近400万円を割ってピークの780万円の半分未満になった。これだけ仮想通貨価格が下がると仮想通貨に投資してきた国や企業が損失を被り、国家財政や企業経営を圧迫することが考えられる。

含み損のエルサルバドル

　2021年は仮想通貨市場が高騰し2017～18年に続く2回目の世界的仮想通貨ブームとなったが、昨年暮れからほとんどの通貨で価格の下落が続いている。

　特に年明けになって米早期利上げ観測が高まると、基本的には金利を生まない資産である仮想通貨の相対的価値は下がり、価格下落が加速した。

　1月24日までにビットコインは370万円台まで下がり、昨年11月につけた史上最高値の780万円の半分未満になった。イーサリアムも24日までに24万円台をつけ、11月につけた55万円から半分以上の価値を失った。バイナンスコインも昨年11月につけた最高値が7万6000円、1月24日のレートが3万8000円台でほぼ半分になった。

　そしてこれだけ仮想通貨の価値が下落すると、これまで仮想通貨に投資してきた個人だけではなく、国や企業の財政状態にも深刻な影響を及ぼす。

　その最たる例はエルサルバドルだ。エルサルバドルは、昨年9月にビットコインを法定通貨として採用。すでに国民の多くがビットコインを保有している。ビットコインのレートが下がることによって、エルサルバドル国民は資産の多くを失うことになる。

　またエルサルバドル政府もビットコインを購入してきた。ビットコインが正式に法定通貨化されたのは昨年9月7日だが、その直前となる6日から7日にかけて政府はビットコインを550枚購入。購入平均レートは日本円で500万円強だった。つまりこの2日間だけで30億円近い金額をビットコイン購入に充てたことになる。

　その後もエルサルバドル政府は何度かビットコイン購入を行い、今年1月21日には9回目の購入。これまでの合計で買った枚数は1,801枚になり、平均取得価格は日本円で約550万円。購入額の合計は約100億円になる。

　1月24日現在のビットコインレートを380万円とすると、すでに1枚あたり170万円、1,801枚で約30億円の含み損が出ている。これはエルサルバドルの財政を圧迫する要因となる。

　またビットコインに投資してきた企業も多い。「世界で最も多くビットコインを持つ企業」と言われるのは、アメリカのマイクロストラテジーというソフトウェア企業だ。この企業は2020年8月からビットコインを買い続け、2022年1月現在で約12万1000枚も保有している。

　ビットコインのレートが380万円だと、12万1000枚の価値は約4,600億円にもなる。マイクロストラテジーは早くからビットコインを買ってきただけあり、平均取得価格は約330万円とまだ含み益がある。しかし今後も下げ続ければいずれは含み損に転落する。

　そもそもこの企業は1月21日時点の時価総額が約4,000億円で、時価総額よりも多くのビットコインを保有しているというのはやや異常な感じがある。

　ビットコインや他の仮想通貨価格の下落によって、個人、国、企業の持つ資産価値が下がる。そこにさらに株価の暴落が重なると、世界は深刻な景気後退に陥るリスクがある。