今後の製薬業界に影響するワクチン特許問題

COVID-19ワクチンが完成し世界各国で接種が始まっている。しかしワクチンを製造できるのは一部のメーカーのみで世界中の人々にわたるのに時間がかかることから、途上国がワクチン開発国に対し特許を一時放棄するよう要求。この問題は今後の製薬企業の業績に大きく影響してくる。

特許放棄でジェネリックが可能に

　2020年から世界中を恐怖に包んでいるCOVID-19（新型コロナウイルス）のパンデミックだが、昨年末に各国がワクチンを完成させてようやく終息への希望が見えてきた。

　しかし多少の希望が見えたにも関わらず、まだまだ問題は残っている。その1つがワクチン分配の不平等問題だ。ワクチンは自国メーカーが開発している国が最も早く接種が進み、次に開発国から買えるお金がある先進国。そして開発も購入もできない途上国はほとんど接種が進んでいない。

　ワクチン接種が早く進んだアメリカ、イギリス、イスラエルなどは感染数が激減し、これまで規制していた多くのビジネスや個人行動を緩和してきている。その一方でインドなどはワクチン接種が進んでおらず、感染者は増え続けている。インドでは最近1日の新規感染者数が40万人を超える日があった。

　すでに予想はされていたことだが、現在の世界には明確にワクチン格差が存在している。このような格差を是正するために、途上国は最近WTO（世界貿易機関）の場などで、「COVID-19ワクチンの特許を持っている企業は一時放棄して欲しい」と要求。しかしこれが問題を呼んでいる。

　まず前提として、医薬品は開発した企業が特許を持っており、他メーカーは成分がわかっていても同じ薬を製造することは許されていない。しかし特許には期限があり、一般的に薬の特許は20～30年となっている。

　つまり20～30年経って特許が切れれば他製薬会社も成分が同じであるが別製品として販売できる薬を開発できる。このような特許切れ後に他メーカーによって開発された医薬品が「ジェネリック薬」だ。

　現在ジェネリック薬は日本でも多く出回っている。そして現在途上国が要求しているのは、「ワクチンの特許をすぐに放棄して我々にジェネリック薬を作らせよ」というものだ。

　だがこれに対して先進国の製薬会社は当然反発している。それは当然だろう。これまで莫大なお金をかけてワクチンを開発し、これから大量に製造・販売して開発コストを回収しようというところだ。そこでいきなり特許放棄などしたら、これまでかけてきた開発コストが無駄になる。

　しかし世界にワクチン格差が存在する限り、今後も途上国の特許放棄への要求は続くだろう。それを認めない先進国の製薬会社との綱引きは今後も続く。