ロシアへの制裁拡大で欧州経済に暗雲

18日に起こったマレーシア機撃墜以来、欧州の中にロシアへ経済制裁を課すべきという声が急激に拡大している。しかしロシアとの経済関係が強い欧州にとっては、自らの経済にもダメージになる危険な措置でもある。

ウクライナ問題の過去記事はこちら。

「ロシア売り」で株が下落

2月のウクライナ問題勃発以来、これまではロシアへの制裁について積極的なのはアメリカで、欧州各国は消極的だった。しかしそれがマレーシア機撃墜で一変。欧州と言ってもその中には何十も国があるので、積極的になった国もあれば、今でも消極的な国もある。しかし欧州全体で見たら、今はアメリカよりも制裁に積極的になったと見ても間違いではない。特にイギリスとドイツという欧州の中心的な２国が積極的になっているのは大きい。

今のところ、制裁措置は個人や企業に対する入国禁止や資産凍結、そして特定の品目に対する禁輸などが中心だ。個人に対しての制裁は主にロシア政府高官に対して行われ、欧州の国に入国禁止にしたり、欧州内の資産を凍結したりしている。この措置については、すでに日本政府も実施を発表している。

一方でロシアは折れる姿勢を見せずに、全面的に対抗姿勢を打ち出している。現在のウクライナ政府は親EU政権なので、ロシアはウクライナに対する経済制裁措置をすでにいくつか発表。ジャガイモ、豚肉、チョコレートなどのロシアへの輸出をすでに禁止していたが、最近さらに牛乳やチーズも輸出を禁止した。

欧州との対立激化によって金融市場ではすでに「ロシア売り」と言われるほど、ロシア株の売りと通貨・ルーブルの売りが起こっている。ただこのロシア売りは、メディアが報道しているほど大げさなものではない。

実際に数字で検証してみよう。ロシア株の主な指数は、モスクワ証券取引所のRTS指数だ。RTS指数は、撃墜事件が起こる直前の現地時間16日の終値が1,350程度だった。そして25日の終値は1,245である。これは割合にして約8％の下げとなっている。これが1日で8％なら大暴落だが、約10日で8％だ。まだ騒ぐほどの下げでもない。

RTS指数は、2月にウクライナ問題が勃発してからしばらく下げ続け、3月中旬には一度1,062まで下がった。今月25日の1,245はその水準に比べれば高い。また3月も、1,062まで下げてからその後は反騰している。

このように、株価の下げ自体はまだ問題は小さい。やはり問題は、経済制裁の強化によって欧州とロシア双方の経済がダメージを受けることだろう。ドイツではすでに、ロシアへの制裁によってドイツ経済の回復が減速することが懸念され始めている。

ちなみに、イギリスとドイツの政府関係者から、「ロシアから次回のW杯開催権を剥奪するべきだ。」という声まで上がっている。実際に剥奪される可能性は低いが、場合によっては欧州各国が参加ボイコットなどをする事態にもなりかねない。ウクライナに始まった欧州とロシアの対立は、どちらかが折れるまで延々と続くことになるのだろうか。

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