バイナンスが創業以来最大の危機

マネーロンダリングなどの違法行為に関わっていたとして米で捜査を受けていたバイナンスが、21日になって罪を認め当局と和解。しかしその内容は日本円で6,000億円以上の巨額の罰金の支払い、米市場からの完全撤退、そしてチャンポンCEOの辞任など非常に厳しいものだった。バイナンスは創業以来最大の危機に陥ったと言ってもいい。

米からは完全撤退へ

　中国発の仮想通貨取引所であるバイナンス（Binance）は、昨年11月にFTXが破綻してからは世界最大の仮想通貨取引所と言ってもいい存在だった。

　しかしそのバイナンスが大きな危機を迎えた。アメリカでは現地法人を設立して仮想通貨取引所を運営していたのだが、マネーロンダリングやテロ資金供与など違法行為に加担している疑いで、最近は当局の捜査を受けていた。

　そして今週21日になって、バイナンスは当局の告発内容を全面的に認めて和解すると発表した。だがその和解内容が非常に厳しい。まず捜査当局である金融犯罪取締ネットワーク（FinCEN）に対して34億ドル（約5,060億円）、そして海外送金などの監視機関である外国資産管理局（OFAC）に対して9億6800万ドル（約1,440億円）、合わせて43億6800万ドル（約6,500億円）という巨額の罰金を支払う。

　またバイナンスは今年3月にCFTC（商品先物取引委員会）に提訴されており、今回の和解はCFTCとの和解も含まれる。

　さらにジャオ・チャンポンCEO個人にも5,000万ドル（約74億5000万円）の罰金が課される。そしてバイナンスは米国法人を畳んでアメリカから撤退することに合意し、さらにチャンポンCEOも引責辞任することになった。

　これは非常に非常に厳しい内容の和解と言っていい。問題となっていた告発内容は、バイナンスがその取引所で行われていた違法行為を適切に取り締まらなかったこと。違法行為には詐欺やマネーロンダリングなどの他、米国居住者とシリアや北朝鮮など制裁対象国間の取引、さらにアルカイーダのようなテロ組織との取引も含まれる。このような違法取引が10万件以上あったことが確認されているという。

　これでバイナンスはアメリカの市場を失うことになる。バイナンスは今年5月にはカナダから完全撤退。さらに欧州ではオランダ・ベルギーからの撤退、キプロスにおける仮想通貨取引業者としての登録抹消の申請、イギリスにおける仮想通貨業者登録の取り消し、そしてフランス、イタリア、スペイン、ポーランドでは匿名性の高い12通貨の上場廃止など、最近次々と撤退・縮小を発表している。

　巨額の罰金を払いアメリカから撤退し、さらにチャンポンCEOも辞任となればバイナンスは創業以来最大の危機を迎えたと言ってもいい。取引所トークンのバイナンスコイン（BNB）は、21日深夜に一時40,000円をつけたがその後和解のニュースが流れると22日朝方には15％以上安い33,000円台まで下落した。

　バイナンスは中国で創業されたが、その後は多くの国で法人を置かず正式な登録もせずに仮想通貨サービスを提供する独特のビジネスモデルを続けてきた。しかしそのようなやり方が多くの国で厳しい目を向けられ始め、そして法人を設立していたアメリカからもついに追い出される形になった。

　今後バイナンスがFTXのように追い込まれないという保証はない。しかし日本は今年になって正式な登録業者のバイナンス・ジャパンとして業務を開始したのがまだ救いか。日本は規制が厳しいので、FTX破綻時も日本法人に預けられていた資産は無事だった。