トヨタの生産調整は前途多難な世界経済を示す

トヨタ自動車が10日になって、9月と10月で合計40万台の減産を行うと発表した。理由は東南アジアからの部品調達が滞っていることなどを挙げているが、この減産は世界経済の回復がかなり前途多難であることを示している。

部品工場が操業できず

　トヨタ自動車が10日になって、9月と10月で合計40万台の自動車減産を行うと発表した。トヨタは先月にすでに、9月に36万台（国内14万台、海外22万台）の減産を発表していたので、そちらと合わせると76万台にもなる。

　10日に発表した40万台の内訳は、9月が7万台（国内3万台、海外4万台）、10月が33万台（国内15万台、海外18万台）となっている。トヨタの2020年の販売台数は約950万台だったので、9～10月の減産分だけでその8％に相当する。

　トヨタは減産の主な理由として、長引くパンデミックのため海外からの部品調達が滞っていることを挙げた。特に6～7月頃から東南アジアで感染者が激増しており、これらの国では部品工場が正常に稼働できない状況が続いている。

　東南アジアは2020年は比較的感染者が少ない国が多かったのだが、21年夏から激増している。インドネシアは6～7月には同地域で最も深刻と言われ7月には1日の感染者が5万人を超えた日もあったが、幸いに8月以降減少し最近では1万人以下の日が多くなった。

　しかし他国は改善が見られない。マレーシアは7月後半以降も感染者が増え続け、8月になってからは2万人前後の日がずっと続いている。タイも8月まで増え続け8月13日には23,000人を超えてピークとなったが、その後ようやく多少は減った程度だ。

　ベトナムは7月前半までは抑えられていたものの7月後半から増えて最近では1万人超えの日が増えた。フィリピンは8月になって首都マニラ周辺で厳しいロックダウンを実施したのに増え続け、9月9日は27,000人を超えて過去最高となった。

　トヨタが2ヶ月連続で大幅減産を発表したのは部品調達が滞っているからだけではなく、去年暮れ頃から続く半導体不足のためもある。だがこの減産からわかることは、世界の多くの国で感染者が減らなければ世界経済の回復は難しいということだ。

　世界経済は一体化しており、一部の国や地域がパンデミックを収束させたとしても他の国・地域が収束できなければ、世界経済全体が回復することはできない。

　WHOのテドロス事務局長や他の幹部は、「先進国は3回目の接種よりも途上国にワクチンを回すべきだ」と言っている。もちろん先進国がその言葉に従う必要があるわけではないが、やはり一体化した世界経済の中では途上国でパンデミックが続けばその影響は先進国経済にも及んでくる。

　東南アジアは接種が進んでいない国が多く、例えばフィリピンでは9月10日現在で2回接種を終えたのは全人口の15％程度。アフリカも接種率は極めて低い国が多い。こういった国で人口の大半が接種を終えるのはまだ先であり、それを考えると世界経済の回復はかなり前途多難と言える。