ジェイコム騒動のみずほがまた誤発注

みずほ証券が25日の株式市場で、構造計画研究所の株を指値で注文するはずが、成行で注文するという誤発注を出していた。今回の誤発注は大事にはならなかったが、みずほの誤発注と言えば2005年のジェイコム誤発注事件を思い出す。

2005年当時は大事件に

　みずほ証券が27日に、25日の東京株式市場で構造計画研究所（銘柄コード：4748）の株を誤発注したと発表した。構造計画研究所とは、JASDAQ上場のコンサルティング企業。

　みずほ証券は27日の市場開始時に、顧客から依頼されて「１万8700株の指値買い注文」を、構造計画研究所の株に対して出すはずだった。ところが発注した担当者が誤って、それを「成行買い注文」で出してしまった。

　構造計画研究所は、出来高が多くない「閑散株」と言える銘柄だ。誤発注以前の直近１ヶ月における1日の平均出来高は1万株にも満たない。現在日本の株式市場は売買単位が全て100株に統一されているため、1万株未満とは100単位未満ということになる。

　このような閑散株で1万8700株もの成行注文が出たので、25日は寄り付きから買いが圧倒的優勢となり9時10分過ぎにようやく寄り付き。寄り値は前日終値の2,722円より約9％高い2,959円だった。

　しかし誤発注が終わるとその後は買いよりも売りが多くなり、前場から後場を通して株価は下落。25日の終値は前日よりわずかに高い2,739円だった。

　みずほ証券による誤発注と言えば、2005年12月のジェイコム誤発注事件を思い出す。ただし現在のみずほ証券は、2005年当時のみずほ証券を2009年に新光証券が買収し、同社が「みずほ証券」と社名を変更したもの。厳密に言えば2020年と2005年のみずほ証券は別会社となる。

　2005年12月8日に、派遣会社のジェイコム（現ライク、銘柄コード：2462）がマザーズに上場した。公募価格は61万円、上場初値は67万2000円だった。当時は新興株ブームとなっており、IPOはかなり価格が上がるのが当然の市場だった。

　ところが寄り付き直後にストップ安の57万2000円まで下落するという動きを見せる。当時のIPO市場でこのような動きは異常だったが、下落したのは数十万株という大量の売り注文が出ていたためだ。

　そしてこれはみずほ証券による誤発注のため起こった値動きだった。みずほ証券はこの日、ジェイコム株を「61万円で1株」の指値売りで空売りする予定だった。ところがそれを間違って「1円で61万株」と入れてしまった。

　61万株もの大量の売り注文が出たため、その注文に押されてジェイコム株はストップ安まで下落した。しかし誤発注の空売り注文であるとの認識が広まると、みずほ証券が後日必ず買い戻すとの認識も広まった（空売りは必ず買い戻す必要がある）。

　そのため高値でみずほ証券に売ろうという投資家からの買いが殺到し、61万株の空売り注文は全て吸収され、10時半以降は逆にストップ高に張り付いたまま初日を終了した。

　この誤発注によってジェイコム株は正常な取引ができないと判断され、翌日以降の取引は停止。みずほの空売りはその後91万2000円で買い戻し強制決済されることと決められた。そして12月14日から取引が再開された。

　この誤発注が大事件になったのは、61万株と非常に多い注文になったこと（ジェイコム株は当時1株1単位なので、61万単位になる）。そして空売りの注文だったことがある。

　この事件に比べると構造計画研究所の誤発注はそれほど影響は大きくなかった、むしろジェイコム株誤発注事件を経験した投資家は、そちらを思い出した人が多いのではないか。