サヤ取りならリスクを抑えた仮想通貨取引

仮想通貨は一般的に値動きが激しく、ハイリスク・ハイリターンな取引と言われる。そこで2種の通貨を同時に売りと買いで持つ「サヤ取り」なら、ややリスクを抑えて仮想通貨取引を行うことができる。

先物等で広く使われる手法

　株やFXと並ぶ投資先として、仮想通貨がかなり浸透してきた。しかし仮想通貨は一般的に値動きが激しく、ハイリスク・ハイリターンな取引と言われる。それを好む投資家が仮想通貨を取引していると思われるが、もう少しローリスクな取引をしたいと考える者もいるだろう。

　仮想通貨である程度リスクを抑えて取引をする方法として、「サヤ取り」が考えられる。これは2種類の通貨を同時に売りと買いで持ち、それらの価格差を利用して利益を狙う方法だ。なおこのような手法はサヤ取り以外にも、「裁定取引」「アービトラージ」「スプレッド取引」などさまざまな呼び方をされている。

　もともとサヤ取りは仮想通貨だけではなく、いろいろな金融商品で使われてきた手法だ。よく行われているのが商品先物だが、それは商品先物も単体の取引だとハイリスク・ハイリターンであるためだった。ハイリスクな商品先物取引も、サヤ取りでややローリスクに取引ができる。

　商品先物でよくサヤ取りに使われてきたペアは、金・白金だった。これらは同じ貴金属なので値動きの相関係数が高い。ただし最近はその傾向が崩れており、金は高騰しているが白金はあまり上がっておらず、この2種のサヤ取りもやりにくくなっている。

　商品先物は金・白金の他にも、同じエネルギー銘柄の原油・ガソリンといったペアでもサヤ取りが行われてきた。

　また同様に株式市場でもこの手法は使われている。株式市場の場合は同じ業界の2銘柄が相関係数が高いので、サヤ取りに使われることが多い。

　仮想通貨に話を戻すと、最近の仮想通貨市場では主要な仮想通貨間の相関係数はかなり高くなっている。例えばビットコイン・イーサリアムや、ビットコイン・ライトコインなどは相関係数が0.8～0.9で推移している（相関係数1は完全に一致した動きを意味する）。またビットコイン・ビットコインキャッシュなど、もともとは同じ通貨で分裂した2つなら相関係数は当然高いだろう。

　問題は仮想通貨業界がまだ新しく、サヤ取りに必要なツールを提供する業者が少ない点だ。サヤ取りをするためには、2つの金融商品の価格差や価格比の推移を表わしたチャートが必要になる。また2つの商品を同時に発注できるシステムもあるのが望ましい。

　今のところ日本語サイトでそういったツールを提供しているところは多くないが、少なくとも2通貨の価格差・価格比チャートなら英語など他言語のサイトも含めて探してみればそれなりに見つかると思われる。そして発注は全く同時でなくとも、ほぼ同時ならサヤ取りは可能だ。

　仮想通貨を単独で取引するだけではなく、2つ同時に取引するサヤ取りを視野に入れると取引の幅が広がる。