カザフスタンの争乱は他国でも起こりうる

新年が明けてから中央アジアのカザフスタンでは燃料価格の高騰に抗議するデモが拡大。デモ隊は暴徒化して全土に非常事態宣言が発令される大変な事態になっている。しかしこの暴動は燃料価格が高騰していることに起因するため、世界的なインフレ傾向の現在は他国でも起こりうる。

内閣は総辞職

　2022年は新年からいろいろ大変な事態が起こっている。オミクロン株を中心に世界的に感染が爆発し、4日には新規感染者数が200万人を超えた。日本でも今週になって感染が激増して6日には昨年9月18日以来の4,000人超えとなった。

　そして中央アジアの国・カザフスタンでは、年明け早々大規模なデモ・暴動が発生している。きっかけとなったのは、液化石油ガス（LPG）価格の高騰。

　カザフスタンではLPGは自動車の燃料として広く使われている。自動車というと基本的にはガソリンで走り、最近ではハイブリッド車やEV（電気自動車）などエコカーが増えている。しかし日本でもLPGを燃料として走る車は数十万台程度ながら存在しており、主にタクシーなど業務用で使われる。

　カザフスタンは自家用車でもLPGで走っている車が多い。そして去年まではLPGがリッターあたり日本円で16円程度だったのだが、新年1月1日に価格の自由化が実施されると2倍の32円程度に高騰した。

　この高騰に抗議して、2日には西部にあるジャナオゼンという都市でデモが開始。デモ隊は道路を封鎖するなどの手段を取った。その後抗議は全土に広がり、4日までには最大都市のアルマトイでも行われた。

　デモ隊は暴徒化し、アルマトイでは国際空港を占拠したり、大統領官邸を占拠したり、政府機関に放火するなどの行為を行っている。また警官隊との衝突ですでに数百人の負傷者や10名以上の死者が出ている。

　5日未明にはアルマトイなど一部の地域に非常事態宣言が発令され、同日中には全土に拡大された。またこの日、マミン首相を初めとする内閣が総辞職した。トカエフ大統領は辞職していないが、安全保障会議議長という重要な職にあったナザルバエフ前大統領を解任し、自分が同職に就くと発表した。

　これら一連の措置が発表されてもデモ・暴動の勢いは収まらず、6日になっても続いている。この地域にはロシアとカザフスタンを含む6ヶ国から成る集団安全保障条約（CSTO）という軍事同盟が存在しており、トカエフ大統領はCSTOに軍隊派遣を要請。CSTOはこれを了承し、これからロシア軍などが介入することになる。

　ロシア軍が介入してくれば、さすがに暴動は収まるかもしれない。しかしカザフスタンの争乱は、特殊な事件と言うことはできない。現在では世界的にインフレが進行しており、燃料価格も上がっている。同様の事件が他国で起こる可能性は十分にある。