エヌビディアが史上8社目の1兆ドル企業に

米半導体メーカー・エヌビディアの株価は今年になって急上昇しており、今週30日には時価総額が1兆ドルを突破。これでエヌビディアは世界で史上8社目の時価総額1兆ドル企業となった。この裏にはChatGPTの大ヒットによる特需があると見られている。

ChatGPTの特需で株高

　米半導体メーカー・エヌビディア（銘柄コード：NVDA）は、今年になって株価が急上昇している。今年になってもFRBはまだ利上げを続けており、3月には米金融不安、5月には債務上限問題と株価には不利な要因が多い。実際にNY市場全体の地合はあまりよくないのだが、エヌビディア株はそのような地合でも強さを見せている。

　今年開始時点では140ドルだった同社の株価は、今週30日には419ドルと年初の3倍まで急上昇。時価総額は世界の株式市場で8社目となる1兆ドル超えを達成した。

　これまで1兆ドルを突破した7社は、まずGAFAMと呼ばれる巨大IT5社。つまりアルファベット（Google）、Amazon、メタ（Facebook）、Apple、そしてマイクロソフト。それらに加えてEVメーカーのテスラと、サウジアラビアの石油公社・サウジアラムコの2社になる。

　そして8社目としてエヌビディアが1兆ドルを達成した。エヌビディアは半導体などIT関連部品を製造している企業であり、今年になってからの株価急上昇の裏にはチャットAI・ChatGPTの大ヒットがあると見られている。

　ChatGPTはこれまでにはないほど正確で良質な回答ができるチャットAIとして昨年11月にリリースされた。そしてリリース直後から世界でユーザーが爆発的に増え、すでに数億人が使っていると言われる。

　エヌビディアはAI向け半導体の分野で高いシェアを持っており、ChatGPTの大ヒットによって今後エヌビディア製の半導体への需要が急増するとの見通しが高まり、今年の株価3倍高となった。

　そしてエヌビディアにはChatGPTの前にもすでに別の特需が存在していた。エヌビディアはパソコンのグラフィック機能を担う部品であるグラフィックボードも製造している。グラフィックボードはGPUなどとも呼ばれるが、この部品は仮想通貨のマイニングにとって特に必要となる。

　そのため2017年頃から仮想通貨が世界的に普及しマイニングの需要が爆発的に高まると、グラフィックボードの需要も高まりエヌビディアの業績にとって強力なブーストとなった。

　2回目の仮想通貨ブームがピークとなった2021年11月には、エヌビディアの株価は346ドルまで上昇。しかしそこで仮想通貨バブルが弾けFRBが緩和から引き締めに転じたため株式市場の地合が悪化すると、エヌビディア株も22年10月には108ドルと前年のピークの3分の1にまで暴落した。

　ところがその直後にChatGPTが登場してエヌビディアにとって新たな特需が生まれた。エヌビディアはなんとも運の強い企業で、そのような運の良さも時価総額1兆ドル達成の一因となったと思われる。