弾劾目前で最大の窮地に陥るブラジルのルセフ大統領

ブラジルの議会がルセフ大統領の弾劾に向けて動いている。ルセフ大統領は国の会計を不正に操作していた疑いがかかっており、それを理由として議会で弾劾されようとしている。ルセフ大統領が弾劾されたら、現政権の崩壊の可能性が高い。

17日に下院本会議で採決

ブラジルはここ1～2年、政治的・経済的に非常に厳しい状況になっている。かつてはBRICsの一角として新興国の雄と思われていたブラジルだが、2010年代になり減速。さらに最近の原油など資源価格の下落によって、景気後退に拍車がかかった。

そんな中、2014年には国営石油公社・ペトロブラスの大規模汚職問題が発覚。政財界の要人が次々に逮捕され、国民の政治不信は高まり、ルセフ大統領の政権にも打撃となった。ペトロブラスの汚職問題では現職の政治家だけではなく、ルラ前大統領まで警察の取り調べを受けている。

そしてペトロブラスよりルセフ大統領にとって大きな問題となっているのが、2014年の再選に向けた選挙期間中に、悪い数字を隠すために国の会計を不正に操作していたという疑惑だ。

この疑惑を材料として、野党は去年12月にルセフ大統領の弾劾手続きを開始。法的問題から一時中断していたものの、先月17日から再開した。

しかし今度はかなりルセフ大統領にとって旗色が悪い。というのも、3月29日には連立政権を組んでいた民主運動党（PMDB）が、連立を離脱すると宣言したからだ。これは民主運動党がそれまで連立を組んでいたルセフ大統領を見限ったという意味になり、連立政権にとって大打撃になった。

今月11日には、議会下院の委員会でルセフ大統領を弾劾するための決議を、賛成38、反対27の賛成多数で採択。決議は下院本会議に送られた。

下院では17日に採決が行われる予定になっている。現在のブラジル下院は513議席あり、その3分の2となる342票の賛成が集まれば、弾劾決議は通過し上院に送られる。調査によると現在の下院議員の内訳は賛成300、反対125、未定88となっているので、勝負は未定の88人が最終的にどちらにつくかになる。与野党ともに未定議員を自分達の側に取り込もうと水面下では駆け引きが行われているので、採決当日まで結果が読めない。

一方株式市場を見ると、政権交代を催促しているように見える。ブラジルの主要指数・ボベスパ指数は、1月末に37,000前後で一旦底をつけてから2ヶ月半上昇が続き、現在では53,000を超えている。そしてルセフ大統領の弾劾が近付くにつれ、上げ足を速めているように見える。

今年の夏にリオ五輪があるとはいえ政治的混乱が収まらないブラジルは、17日の下院採決が1つの山場となりそうだ。