利下げサイクルがどこまで続くかは不透明

先週にスイスが利下げを発表し、米欧も今夏から利下げが始まると予想されている。日本以外の主要国はこれから利下げサイクルに入るわけだが、インフレ懸念はまだ残り利下げがどこまで続けられるか不透明な情勢にある。

資産高はインフレ要因に

　先週の21日木曜に、スイス中銀がサプライズで0.25％の利下げを発表して政策金利を1.5％とした。2022～23年のインフレ抑制のためのハイペースな利上げサイクルの後、主要国が利下げを発表したのはこれが初となる。

　なおここで言う主要国とはいわゆるメジャー通貨の国・地域、日本、アメリカ、ユーロ圏、イギリス、カナダ、スイス、オーストラリアの他にニュージーランドを加えた8ヶ国・地域とする。NZを入れているのは、NZドルはメジャー通貨の国とともに日本のFX業者のほとんどで提供されているため。

　日本以外の主要国は2022～23年にインフレ抑制のためここ数十年で最速と言えるペースで利上げを行い、そして2023年後半にはインフレが落ち着き利上げを終了させた。

　2024年の焦点は各国がいつ利下げを開始するかに移っていたが、先陣を切ったのはスイスであった。ECBは6月に最初の利下げを行うと予想されている。米FRBは昨年末時点では「3月から利下げ開始」との予想もあったものの、インフレや他の経済指標が予想より高く利下げ開始時期予想はどんどん遅れて現在では7月と見られている。

　残った主要国であるイギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドも順次利下げサイクルに入っていくだろう。しかし今回の主要国の利下げサイクルはかなり緩やかなものになり、かつどこまで利下げできるか不透明な情勢にある。

　というのもインフレ懸念は完全に消えておらず、まだ残っているためだ。アメリカのインフレ率を見てもまだ3％を超えており、目標とする2％にまで下がっていない。

　そして利下げ開始見通しを受け、2024年明け以降あらゆる資産が高騰している。株式市場は特に東京株の上昇がすさまじく、日経225平均は年明けからの3ヶ月弱ですでに7,000円以上も暴騰した。1980年代後半のバブル時には1988年が8,595円、89年が8,756円上昇しており、今回は年明け以降の3ヶ月弱でそれらに近い幅上昇してしまった。

　NY株も堅調で、ダウ工業平均は史上最高値を更新して40,000ドルに接近。NASDAQ総合指数も史上最高値を更新した。仮想通貨市場もビットコインETFの承認以降高騰しており、ビットコインは一時1,090万円をつけた。

　さらに先物市場ではNY金が2,200ドルをつけて史上最高値となった。各国の不動産市場もまだ伸びており、東京の中心部では中古マンションの平均価格が1億円を超えたという統計も出た。

　このようにあらゆる資産価格が上がると、それは新たなインフレ要因になる。また現在は比較的上昇が抑えられている原油や天然ガスの価格が上がれば、輸送コスト上昇からインフレを引き起こす可能性は十分ある。

　各国にインフレを起こす要因はまだ残っており、今後インフレが再燃することがあれば各国は利下げを停止し、場合によっては再度の利上げも必要になる。今回の利下げサイクルはゆっくり慎重に進められるものになり、短期間で終わる可能性すら残る。