株価下落で追い詰められるアベノミクス

2016年になってから円高・株安が止まらず、日経225平均が1ヶ月半で4,000円も下げる異常事態になった。円安・株高が唯一の成果とも言えるアベノミクスは、その効果に疑問を持つ者が急激に増えている。

円高・株安で前提が崩れる

「アベノミクス」という言葉が生まれてから、すでに3年以上が経過した。アベノミクスは安倍政権の経済政策という意味で、安倍政権が誕生した2012年末頃から言葉が使われ始めた。アベノミクスは日銀による異次元緩和を通し、円安・株高に金融市場を持っていくことが基盤にあった。これが「第1の矢」と言われる「大胆な金融政策」だった。

第2の矢は「機動的な財政政策」、第3の矢は「民間投資を喚起する成長戦略」。ただ第2・第3の矢は第1の矢にとっての異次元緩和のように、明確に具現化されることがないまま、2015年9月には「新三本の矢」が発表される。

そして各種経済指標を見ても、アベノミクスはあまり成果を出していない。最も重要なGDPは、消費税増税の影響もあり2014年はマイナス成長。2015年も10～12月期と通年の数字が2月15日に発表されるが、マイナス成長で終わる予想がかなり出ている。

日銀が異次元緩和で目指していたインフレ率2％も達成には程遠く、0％前後で推移している。インフレ率は低迷しているが食料品の価格は上がり、また賃金も伸びていない。安倍政権になってから実質賃金はほとんどの月で前年より下がっている。ただ全ての指標が悪いわけではなく、失業率など改善されている数字もある。

このような状況なので、円安・株高がアベノミクスのほぼ唯一と言ってもいい成果だった。だがそれが、2016年に入ってからの円高・株安で崩れつつある。

問題はこれから実体経済にどの程度の悪影響が出るかだ。リーマンショックの大暴落があったのは2008年10月だったが、暴落の翌週からはっきりわかるほど実体経済が悪化したわけではなかった。しかしそれから半年間、2008年10月～09年4月に、特にアメリカの経済が急速に悪化していった。

その半年間、アメリカの失業率は毎月0.4～0.5％ずつ上がり、リーマン前は6％台だった数字が、09年夏には9％台にもなった。また米雇用統計も、前月比で「－60万人」など極度に悪い数字が出ていた。

現在株価の暴落が酷い日本も、今後だんだんと実体経済への悪影響が出てくると思われる。そして実体経済以上に深刻なのが、年金の運用損だ。日本の年金を運用するGPIFは、2014年後半頃から株式の運用比率を大きく高めた。そのため日本や海外の株が下落すると、年金の運用損がこれまで以上に出る。

特に今年1～3月期の運用損が相当大きくなりそうだが、それが発表されるのは4月以降だ。発表されて損が大きくなっていたら、国民や野党から厳しく追及される。

とにかく株価の下落が急激すぎ、これまでアベノミクスで多少なりとも出してきた成果、築いてきたものが全て崩れつつある。アベノミクスは、もう追い詰められているのだ。