パナマ文書が世界の金融界に大激震を起こす

税金が安い国、いわゆる「タックスヘイブン」を使って世界の著名人達が行っていた金融取引について記した膨大な情報量の文書が、最近になって流出した。これは世界の金融界に大激震を起こす可能性を持つ事件だ。

富裕層の金融取引情報をリーク

世界にはいわゆる「タックスヘイブン」と呼ばれる、税率が低い国や地域が点在している。例えば所得税がないヨーロッパのモナコなどがその一例だが、それ以外にも世界のいろいろな場所にある。

タックスヘイブンは税率が低いために、世界の資産家や大企業が税金逃れのためによく利用していると言われる。世界各国は自国の富裕層や企業がタックスヘイブンを使って行う税金逃れ対策を行っているが、完全には取り締まれていないのが現状だ。

タックスヘイブンの1つに、中米にある小さな国・パナマがある。パナマには「パナマ運河」という海運上の重要な地点があり、パナマ運河の名前を聞いたことがある人は多いだろう。

そのパナマから、金融界に大激震を起こすような事件が発生した。パナマにMossack Fonsecaという法律事務所があるが、ここから最近流出した内部文書に、世界各国の著名人、政治家、富裕層などがタックスヘイブンで行っている金融取引の膨大な情報が載っているというのだ。流出した文書は、パナマから流出したので「パナマ文書」と名付けられた。

今回流出した情報量は2.6テラバイト（TB）にもなる。パソコン用の外付けハードディスクは、記憶容量が1TB、2TB、4TBなどで販売されている。ハードディスク丸ごと1つ分のデータと言えば、どれだけ膨大なものかわかるかもしれない。

流出した取引情報の例には以下のようなものがある。サッカーのスターであるリオネル・メッシが、タックスヘイブンを利用して金融取引をしていた。またロシアのプーチン大統領の友人が、2008～13年にタックスヘイブンのバージン諸島に設立した企業を通して少なくとも20億ドル（約2200億円）の金融取引をしていた。

そしてアイスランドのグンロイグソン首相は、同様にバージン諸島の企業を通して、数百万ドル分の債券を保有していたというのだ。アイスランドではこの情報リークによって首相への批判が高まり、4月5日に首相は辞任に追い込まれた。

そしてフランスなど他国も、パナマ文書に載っている取引で脱税の疑いがあるものについて捜査を始めているという。今後脱税だと発覚したものがあれば、関連した個人や企業は逮捕されることになる。

今月に公開されたパナマ文書が全てではなく、5月に「完全版」の公開が予定されているという。そうなるとタックスヘイブンを利用した脱税の捜査が、さらに広がる可能性がある。これまでタックスヘイブンを利用して税金逃れをしていた富裕層や著名人にとって、怯えて眠れない日々がこれから始まる。