トルコのクーデター未遂は今後のEUとの関係を混迷化させる

週末にトルコで大規模なクーデター未遂が発生。鎮圧はされたものの、死者が200人以上、逮捕者も少なく見積もっても数千人という大事件となった。週明けの金融市場は落ち着いているとは言え、今後のEUとの関係は混迷化に向かう。

市民が立ち向かって鎮圧

トルコでは日本時間の16日土曜未明（現地時間15日夜）に、軍が主導してクーデターを試みた。一時は国会を爆破したり国際空港を占拠するなどして「政権奪取」宣言もしたが、結局約12時間後には鎮圧された。ここで鎮圧の主力となったのは政府側の軍隊や警察ではなく、一般のトルコ人だった。トルコ人たちが、エルドアン大統領の呼びかけに応えてクーデター側に立ち向かったのだ。

そもそもなぜクーデターなどを起こしたのか？それは、だんだんと自分への反対勢力に対する弾圧を強めているエルドアン政権に対し反発したためと見られている。エルドアン政権は最近国内での言論弾圧などを強めており、今年3月には政権に批判的な大手紙の「ザマン」を政府管理下に置いた。

そういった動きに抗議してクーデターが起こったと言われるのだが、それは失敗に終わり鎮圧された。そして市民がクーデター軍に立ち向かったので、市民の多くがエルドアン政権を支持していることが明らかになった。

今後エルドアン政権は、クーデターの再発防止という名目もあり、国内の反対勢力に対する弾圧をさらに強めていくだろう。ただそういった動きは、民主主義を至上とするEUの価値観とは合わず、EU諸国からの反発が高まっていく。

トルコはEU加盟を目指しているが、イスラム教国という宗教的な違いや、その他の価値観の違いから、長年加盟が実現しない状態が続いている。さらにエルドアン政権は今回のクーデター後に死刑を復活させることを検討していると発表し、それに対してドイツがかなり反発している。

クーデター未遂によって、トルコとEUとの溝が今後深まっていく可能性が高い。しかし欧州には難民問題という深刻な問題が残っている。去年の夏に中東などから難民が大挙して欧州に押し寄せ、それが大問題に発展したのは記憶に新しい。

EUは今年になって難民の入口となるギリシャ＝マケドニア国境にフェンスを建設。そこで難民を足止めした。さらにトルコと、「ギリシャに不法に上陸した難民をトルコに送り返し、その代わりに同数のシリア人難民をEUが引き取る」という内容で合意。この合意が実施されてから、難民問題は一旦落ち着いた。

つまりトルコの協力があったからこそ、難民の流れを止めることができた。トルコとEUとの間が険悪になると、それも難しくなっていく。

クーデターによって一時トルコリラが暴落し、クロス円も円高になった。鎮圧されたために週明けは目立った暴落は起きていないが、将来的な火種がまかれたのは間違いない。