英社会の大きな賭けが始まった

英では19日からパンデミック下で課されていた制限がほぼ全て撤廃され、パンデミック前に近い生活ができるようになる。ワクチン接種が進んだためこのような措置を実施したのだが、感染者はかなり増えておりこれは大きな賭けとなる。

重症者や死者は増えず

　イギリスで19日からパンデミック下で課されていた社会生活に関する制限がほぼ全て撤廃される。これによってイギリスの人々は、2019年のようなパンデミック前に近い生活ができるようになる。

　具体的には、大規模な人数で集会や各種イベントを開くこともできるが、接種の証明や陰性の証明を提示することが証明される。ソーシャルディスタンスを取るという制限もなくなる。

　公共の場ではマスクをつける義務がなくなるが、マスクの推奨は残る。コンサートホールや映画館の人数制限は撤廃される。ナイトクラブも以前のように営業ができる。などとなる。

　ここまで思い切った制限解除が実施できたのは、イギリスが世界に率先してワクチン接種を進めてきたためだ。イギリスはワクチン開発に成功したアストラゼネカがある国でもあり、昨年末から世界の中でも一早く国民に対して接種を進めてきた。その結果今年7月中旬現在で1回以上接種を受けた人々は国民全体の約70％に達し、2回の接種を完了した人々も50％以上になっている。

　これだけ接種が終わっているので、イギリス政府は思い切って経済成長化への道を探り始めた。ただし6～7月になって感染者自体はかなり増えており、7月17日には1日の感染者が5万人を超えた。ワクチンが普及する前、今年の1月につけた最高値が7万人弱だったので、あと2万人増えると最高値更新になってしまう。

　ただし感染者が増えている一方で、ワクチンのおかげで重症者や死者が増えていない。7月に感染が激増しても死者は1日あたり数十名程度で抑えられており、ワクチン接種前の今年1月の1日あたり1,000人以上と比べると非常に少ない。

　重傷者や死者が抑えられているためイギリスはこのまま経済を正常化する決断をしたが、これはかなり大きな賭けとなる。制限を解除した後、たとえ感染者がかなり増えても重症者や死者が抑えられることで社会が動いていけるなら、この決定は成功と言える。そして他国もイギリスと同様の措置を取るだろう。

　だが感染者だけではなく重症者・死者も増えてこれ以上見過ごすことができないところまできたら、再び制限をかけることになる。そうなると今回の措置は失敗となり、パンデミック終息からの経済正常化はまた遠のくことになる。

　そして感染者が増えると、それだけ新たな変異株が生まれる可能性も高まる。凶悪な変異株が生まれたりしたら、経済正常化計画は狂う。このイギリスの大きな賭けが上手く行くかどうかが、今後の世界の運命を決める。