米議会が間もなくステーブルコイン規制法案可決へ

米で初となる包括的なステーブルコインの規制法案が議会に提出されており、上院をすでに通過し今週中に下院も通過する見込みとなった。この法案に含まれる利回り付きステーブルコインの禁止条項が、15日夜以降にイーサリアムの買い材料になったとの観測も出ている。

利回り付きは禁止へ

　法定通貨にレートを固定した仮想通貨であるステーブルコインは、日本ではあまり使われていないが海外ではすでにかなり広く普及している。

　ステーブルコインとして最も時価総額が大きいテザー（USDT）は、7月16日現在で全仮想通貨の時価総額ランキングで4位にある。なお最近までは3位で見かけることが多かったが、最近のリップル（XRP）の急上昇によってリップルに抜かれた。

　仮想通貨時価総額ランキングで7位のUSDコイン（USDC）がテザーに次ぎ、USDコインの運営企業であるサークル（銘柄コード：CRCL）は最近上場にも成功した。

　しかしサークルの本社がありステーブルコインが普及しているアメリカでも、ステーブルコインを規制する包括的な法律はまだ整備されていなかった。そこで初めてのステーブルコイン規制法案、通称「ジーニアス法案」が今年春に議会に提出された。ジーニアス法案は6月17日に上院で可決され、そして今週中にも下院で可決される見込みになってきた。上下院を通過すればあとはトランプ大統領の署名で成立となる。

　この法案の中に、利回り付きのステーブルコインを禁止する条項がある。利回り付きステーブルコインとは、保有していると年何％かの利息がつくステーブルコインのこと。

一般的にステーキングやレンディングなど、仮想通貨でインカムゲインを得る方法はいくつかある。しかしこれらはステーキングやレンディングといった特定の方法を実施することで可能なもので、保有しているだけで利息がつくという意味ではない。

　上記のテザーやUSDコインは利回り付きではなく、利回り付きステーブルコインの代表的なものにはUSDe（SUSDE）がある。USDeはEthena（エセナ）というプラットフォームが発行しているので、そちらの名前で呼ばれることもある。

　USDeはイーサリアム（ETH）のブロックチェーン上で発行されているので、発行元はUSDeの発行量と同額のイーサリアムを担保資産として保有している。保有によるイーサリアムの価格変動リスク回避のため、イーサリアムの先物売りポジションを保有している。このような取引がイーサリアムの上値を抑えているとの観測もあった。

　ところがジーニアス法案が成立すれば利回り付きステーブルコインが禁止となるため、イーサリアムの先物売りポジションが今後減るとの観測が台頭。イーサリアムのレートはこの見通しを受け、15日夜から16日にかけて6％ほど上昇した。

　ジーニアス法案はステーブルコインを規制する法案だが、むしろしっかりと法規制が整備されることで今後のステーブルコインの普及を促すことにもつながるだろう。